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お知らせ(2015年度)

平成27年度高知信用金庫・高知安心友の会学術賞授与式及び受賞講演会を開催しました

 高知大学医学部では、高知信用金庫及び高知安心友の会から医学研究に対して助成をいただいています。この助成金を基金として、高知大学医学部(高知医科大学時代を含む。)において基礎・臨床の各分野で学術研究上顕著な成果をあげた研究者に対し、学術賞を授与しています。
 受賞対象者は、高知大学医学部の准教授、講師、助教、大学院生、医員及び外国人研究者となっており、本年度はこれらの対象者から5人の応募がありました。選考の結果、次の2名に学術賞を授与することを決定し、授与式及び受賞講演会を平成28年1月5日(火)に医学部基礎臨床研究棟にて執り行いました。


統合生理学准教授 谷口 睦男

哺乳動物におけるフェロモン情報処理

検査部講師 竹内 啓晃

ヘリコバクター・ピロリ慢性持続感染成立の機序解明とピロリ関連疾患の病態解明



平成27年度高知信用金庫・高知安心友の会学術賞受賞者を囲んで




後列左から椛 教授、本家教授、奥谷教授、
前列左から杉浦医学部長、竹内講師、谷口准教授、高知信用金庫 矢野常務理事




○統合生理学の谷口准教授が受賞された研究の概要
 当研究室では学習記憶の神経機構を解明するため、交尾刺激を契機として雌マウスに形成される雄の匂いの記憶(フェロモン記憶)をモデルシステムとして用いてきた。行動薬理学的手法により、その記憶の座が副嗅球であること、代謝型グルタミン酸受容体II型(mGluR2)作動薬を副嗅球に投与すると交尾刺激無しで記憶が成立することを見いだした。しかし、シナプスレベルでの記憶の神経機構の詳細は不明のままであり、個々の細胞レベルでの解析が切望されていた。
 本研究では、副嗅球の主要神経回路である僧帽細胞(グルタミン酸作動性ニューロン)−顆粒細胞(GABA作動性ニューロン)間相反性シナプスに焦点を絞り、 この相反性シナプス伝達について、ホールセル法をマウス副嗅球スライスに適用して調べた。その結果、相反性シナプス電流(IPSC)発生にはmGluR2が極めて重要であること、顆粒細胞の興奮が一定レベル以上になると、mGluR2によりIPSC が抑制され易い状態になることを見出した。顆粒細胞に生じるシナプス電流の解析から、mGluR2は僧帽細胞上のCa2+チャネルの抑制を介してシナプス前機構および後機構の両方により、僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達を抑制することが示唆された。


○検査部の竹内講師が受賞された研究の概要
 ピロリ菌は胃内に感染し上部消化管疾患のみならず自己免疫疾患をはじめ多彩な病態発症に関与する病原細菌である。現在、薬剤耐性化による除菌不成功例の増加は看過できない。強酸性胃内に感染するピロリ菌は著しいgenetic diversityを有し環境適応しており、その生物学的多様性および疾患関連性を一部明らかにした。これまで、ピロリ菌の生態(増殖・細胞分裂)は不明であったが、細胞分裂制御に関与する固有遺伝子cdrAを発見しその作用機序および宿主免疫応答の解析から慢性持続感染成立機序の一端を明らかにした。また、ピロリ関連特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の病態解析から抗体交差反応以外の機序の存在(抗原抗体複合体の関与)を証明し、関与成分の同定からピロリ除菌によるITP治療効果を予測可能とする検査法を開発した。さらに、高知県産業振興・地域貢献の観点から、高知県特産品による抗菌活性および成分を検証し、薬剤耐性ピロリ菌のみならず他の薬剤耐性菌に効果を示すものも見出した。それらの応用展開は疾病予防・健康維持増進に寄与すると考えられる。