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お知らせ(2016年度)

平成28年度高知信用金庫・高知安心友の会学術賞授与式及び受賞講演会開催(1/17)しました

 高知大学医学部では、高知信用金庫及び高知安心友の会から医学研究に対して助成をいただいています。この助成金を基金として、高知大学医学部(高知医科大学時代を含む。)において基礎・臨床の各分野で学術研究上顕著な成果をあげた研究者に対し、学術賞を授与しています。 受賞対象者は、高知大学医学部の准教授、講師、助教、大学院生、医員及び外国人研究者となっており、本年度はこれらの対象者から8人の応募がありました。選考の結果、次の2名に学術賞を授与することを決定し、授与式及び受賞講演会を平成29年1月17日(火)に医学部実習棟にて執り行いました

薬理学助教 清水 翔吾

骨盤内血流低下による前立腺肥大症の発症機構の解明

麻酔科学・
集中治療医学
講師 河野 崇

術後認知機能障害の分子機序解明と周術期予防戦略についての研究

平成28年度高知信用金庫・高知安心友の会学術賞受賞者を囲んで



後列左から奥谷教授、降幡教授、齊藤教授、高田教授
前列左から高知信用金庫 矢野常務理事、清水助教、河野講師、本家医学部長

○薬理学の清水助教が受賞された研究の概要
 前立腺肥大症は40歳以上で症状が出始め、本邦での推定患者数は400万人と報告されている。前立腺肥大症を伴う排尿障害は、生活の質を著しく低下させることが問題となっているが、その発症原因は加齢や性ホルモンバランスの変化を除き、詳細は不明である。
 近年、疫学調査において、高血圧、高脂血症など動脈硬化に関与する疾患が、前立腺肥大症を含む排尿障害の危険因子になりうるとの提言がなされた。我々は、腹側前立腺が過形成及び血流低下を呈する自然発症高血圧ラットを用いて、前立腺血流低下が、前立腺過形成を惹起することを見出した。その機序は、前立腺血流低下により前立腺局所で慢性炎症及び酸化ストレスが発生し、その状態が長時間継続することで、細胞増殖を促進して前立腺過形成が進行するというものである。我々は「前立腺肥大症は血流障害によって進行する」という新しい概念を提唱し、前立腺肥大症に対する血管拡張薬の有用性について報告してきた。

○麻酔科学・集中治療医学の河野講師が受賞された研究の概要
 術後認知機能障害 (Postoperative cognitive dysfunction: POCD) は、 手術・麻酔を契機に生じる認知機能障害で、特に高齢者で問題となる。POCDの発症は、 退院後のQOL低下や就労困難のみならず、死亡率増加にも関連することが報告されている。POCDは多要因性に発症すると考えられるが、 近年、その病態機序として脳内炎症 (Neuroinflammation) の重要性が報告されている。脳内炎症は、 手術侵襲による炎症性刺激が脳内のミクログリアを過剰に活性化させ、 炎症性サイトカインを生産・放出することにより生じる。我々は、加齢による脳の手術侵襲に対する脆弱性の原因として海馬マイクログリアの炎症性フェノタイプ化を意味する "Microglia Priming" に注目している。特に、若年ラットと比較して高齢ラットにおいて海馬マイクログリアのLipopolysaccharideに対する反応性が有意に亢進することをex vivo系実験で明らかとした。マイクログリアの加齢性変化が可逆的な、つまり調節可能な危険因子であれば、適切な周術期管理によってPOCDが予防できるかもしれない。このことから手術前にいかにしてマイクログリアの炎症性フェノタイプを正常に戻すのかがPOCD予防の鍵と考え、研究を進めている。