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研究内容SERVICE&PRODUCTS

     

 高知大学医学部微生物学講座は、主に「ヒト腫瘍ウイルス」「微生物叢(マイクロバイオーム)」の研究を疾患とリンクさせながら行っています。またバクテリオファージの基礎研究も行っています。
 さらに感染症分野の研究にとどまらず、これまでの研究実績を活かしかしながら腫瘍学・血液学の研究も幅広く行なっています。病原微生物学、腫瘍学を学んでみたい諸君の参加を期待しています。

微生物感染と発癌

 ヒトの癌全体の20%〜25%は微生物感染が原因となっています。ウイルスでは、Epstein-Barrウイルス(EBV)による悪性リンパ腫・白血病や胃癌、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)による成人T細胞白血病、C型肝炎ウイルス(HCV)による肝癌、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸癌・中咽頭癌などはその代表です。さらに2008年にはヒトに癌を惹起する第7番目の腫瘍ウイルスとしてメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が報告されました。細菌ではヘリコバクター・ピロリ菌による胃癌がよく知られています。本講座では、主にEBV、MCPyV、HPV、ピロリ菌の発癌機序について、基礎・臨床の両面から研究を行っています。
 腫瘍ウイルスはいずれも持続感染し、感染後長い年月を経て、細胞遺伝子異常との共同作用の結果として癌を発症せしめます。ウイルスという外因要因を基盤に発症するいわゆる「感染癌」において、ウイルス側因子が宿主細胞の癌化を促進する分子機構の解析を行っています。

メルケル細胞ポリオーマウイルスのがん化機構


バクテリオファージの研究

 近年、病原細菌の多剤耐性化が進行し、治療上の深刻な問題となっています。従来の抗菌薬に依存しない治療法の開発が重要であることは論を待ちません。その可能性の一つに、細菌に感染し破壊するウイルスであるバクテリオファージの溶菌活性を利用する「ファージ療法」が提唱されています。当分野では、ファージ療法の可能性について基礎的研究を行っています。



皮膚微生物叢(マイクロバイオーム)のエコロジーと疾患との関係

 人体の様々な部位には常在する微生物叢、いわゆるマイクロバイオームが存在します。例えば、腸内には「腸内フローラ」と呼ばれるマイクロバイオームがあり、その動態が生活習慣病・がん・炎症性疾患などの疾患に関わっていることが明らかにされつつあり、最近注目を集めています。マイクロバイオームは皮膚にもあり(皮膚フローラ)、1cm四方の皮膚には数千もの細菌が存在します。アトピー性皮膚炎患者の皮疹部では黄色ブドウ球菌が増えています。
 一方、ウイルスも皮膚マイクロバイオームを組成することがわかってきており、このウイルス群集をウイロームと呼びます。我々は、ヒトポリオーマウイルスは健康な皮膚にも不顕性持続感染し、皮膚マイクロバイオームを構成することを明らかにしました。そのウイルス検出率やウイルス量は年齢とともに増加することを見出しました(Journal of Infectious Diseases 213:1708-1716, 2016)。
  長年にわたる様々な環境要因による外的な刺激を受け続けることで、皮膚マイクロバイオームが変化し、微生物―宿主間の相互作用により皮膚の状態が変化し、疾患発症につながると予想されます。当講座では、この「皮膚フローラ」の動態と疾患との関係を探究しています。


微生物感染と造血器腫瘍

 造血器悪性腫瘍の成因として、癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活化につながるgeneticな異常、さらにはDNAメチル化に代表されるようなepigeneticな異常があげられます。これらは複雑に絡み合い、さらに別の遺伝子変異が付加されることで腫瘍が完成されると考えられています。Epstein-Barrウイルス(EBV)やヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)に代表されるウイルス関連腫瘍においても、ウイルス感染は発癌のイニシエーションに必須ですが、プロモーションには宿主側の遺伝子変異が必要とされます。このような観点から、本講座ではウイルスによる発癌メカニズムのみならず、腫瘍細胞側におけるgeneticおよびepigeneticな遺伝子異常の解析も行っています。
  微生物感染による慢性炎症が造血器腫瘍の発生に密接に関与しています。例えば、長期にわたる慢性炎症を基盤に発症する膿胸関連リンパ腫(EBV感染)や胃MALTリンパ腫(ヘリコバクターピロリ菌感染)など、どのような分子が発がんに関与するのか、網羅的遺伝子解析技術などを駆使して解明に取り組んでいます。
 当講座は、数多くの造血器腫瘍由来細胞株(白血病・リンパ腫・骨髄腫)を保有しています。これは我々が様々なユニークな造血器腫瘍由来細胞株を独自に樹立してきた成果によるものです。このようなメリットを充分に活用し、研究に役立てていきます。

EBV陽性膿胸関連リンパ腫 (PAL)

(A) CT写真:腫瘍が左胸壁に浸潤 
(B) 病理組織像:びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 
(C) EBER in situ hybridization:リンパ腫細胞はEBV陽性


腫瘍におけるケモカインおよびケモカイン受容体の発現異常メカニズムの解明

 細胞遊走因子ケモカインは感染症やアレルギー性疾患だけでなく腫瘍においても重要な病的役割を担っています。腫瘍細胞でみられるケモカインやケモカイン受容体の発現異常は腫瘍細胞の浸潤や転移、免疫回避と密接に関係していることが知られています。さら近年、Th2細胞、制御性T細胞などに選択的に発現するケモカイン受容体CCR4が高レベルで発現する成人T細胞白血病(ATL)に対する抗CCR4抗体薬(モガムリズマブ)治療が認可されたように、ケモカイン/ケモカイン受容体は腫瘍に対する治療標的としても有用です。しかしながら、腫瘍におけるケモカインやケモカイン受容体の発現異常メカニズムについては不明な点が多く残されています。我々はこれまでに、ATLにおけるCCR4発現制御機構の解明からFra-2/SOX4癌遺伝子カスケードを見出し、細胞増殖や生存などATL発癌に関わる遺伝子を明らかにしました。また、このカスケードの直接的な下流遺伝子群には有用な抗腫瘍薬として注目されている選択的ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の標的の一つであるHDAC8が存在していました。
  当講座では、HTLV-1感染を起因とするATLを主体に、様々な腫瘍におけるケモカイン/ケモカイン受容体の発現制御機構の解明を軸とした治療や診断に有用な分子標的の探索を行っています。

成熟型T細胞リンパ腫におけるFra-2-SOX4経路の役割



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