高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科 第二内科

 

*研究紹介 腎臓・膠原病グループ

我々の研究グループでは、腎疾患の基礎・臨床研究と膠原病・自己免疫疾患の臨床研究を主体に行っております。

基礎研究

基礎研究としては、以下のような急性・慢性腎障害時における分子生物学的進展機序の解明と再生医学的アプローチと腎尿細管障害の病態生理の解明を主体に進めています。

I.急性腎傷害、慢性腎障害の分子生物学的解明と、腎傷害及び尿細管再生時に働く分子を利用した再生医学的アプローチについての研究

我が国における腎疾患患者数、透析患者数は年々増加傾向にあり、平成20年末現在で透析療法を受けている患者さんの数は27万人を越えています。その原疾患である、急性腎障害、慢性腎疾患の病態の解明を臨床へのフィードバックを常に念頭におきながら、研究を進めています。特に再生医学的なアプローチを用いて尿細管細胞の再生のメカニズムを世界に先駆けて検討しています。

  1. 急性腎障害は、頻度が高く予後の悪い疾患ですが、約3割の患者さんで、腎機能が回復する事が知られています。その回復のメカニズムを解明する事により、急性腎障害の再生医学的な新規の治療法の開発を目指しています。虚血/再灌流による急性腎障害からの回復期の尿細管の再生・増殖過程で、腎発生時の尿細管分化時に働くDelta-Notchシステムが再発現し、尿細管細胞の再生・増殖に関与することを虚血/再灌流によるラットの急性腎障害モデルと培養尿細管細胞で示し、Kidney International誌へ報告しました。急性腎障害の回復期に胎生遺伝子のWnt4, Ets-1が発現することを以前報告しており、急性腎障害時に働く脱分化遺伝子及び再分化遺伝子を通じて、ES細胞やiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用した腎臓の再生医療への応用が期待されます。
  2. 急性腎障害の病態は、不明な点が非常に多い疾患です。アポトーシスは遺伝子により支配された細胞死であり、正常細胞の代謝や組織の恒常性の維持に伴い不要な細胞を除去する生理的なプロセスですが、急性腎障害での病態への関与は不明です。今まで急性腎障害時にはアポトーシスが増悪因子であることを示してきました。アポトーシス関連遺伝子であるASK1を欠損した遺伝子改変マウスでは腎機能の予後がよいことを以前報告し、今回、シスプラチンにより急性腎障害を誘導した時に、アポトーシス抑制遺伝子であるPI3-Kinase γを欠損した遺伝子改変マウスではPI3-Kinase class I/Akt pathwayが働かなくなることで腎機能の予後が悪くなることを示し、Kidney International誌へ報告しました。
  3. 慢性腎臓病(CKD)は、非常に頻度の多い病態で、成人人口の17%(日本全国で1900万人以上)と言われています。以前からレニン・アンギオテンシン系の慢性腎臓病への関与が報告されています。近年アルドステロン(Ald)が腎糸球体にも作用する事が私達の報告を含めて解明されてきています(アメリカ腎臓学会雑誌、2005)。私達は腎障害因子としてのアルドステロン(Ald)とそのシグナルの下流に位置するGlucocorticoid-inducibel protein kinase(SGK)-1の作用を分子生物学的な手法を用いて研究しています。Aldの腎メザンギウム細胞においてSGK-1の活性化に関する細胞内情報伝達系を検討し、Aldはメザンギウム細胞でPI3-Kinase とMKK1を介してSGKを活性化しNF-kBを活性化させ、CTGFとICAM-1などの発現亢進を起こし糸球体障害の進展に関与していることを腎炎モデルラットと培養メサンギウム細胞で示し、アメリカ腎臓学会雑誌へ報告しました。

II.ヒト腎尿細管上皮細胞障害時の病態生理に関する研究

  1. 酸化ストレスによる腎尿細管上皮細胞障害の進展機序および抑制方法に関する検討
  2. アンギオテンシンII受容体拮抗薬による腎近位尿細管上皮細胞障害の進展抑制機序の解明
  3. 腎尿細管上皮細胞におけるメガリン遺伝子の転写に及ぼすグルコースの影響
    近年、急激に糖尿病患者は増加しており、それに伴い糖尿病腎症、ひいては糖尿病性腎症による透析導入患者数も増加の一途である。エンドサイトーシスレセプターとして働くメガリンの高血糖下での発現亢進は、AGEsなどの再吸収促進による糖尿病性腎症進展因子となる可能性がある。

などが主たる研究テーマです。今後は急性腎障害の進展機序の解明にあわせ、臨床的早期マーカーのも現在取り組んでいる研究課題です。

臨床研究

臨床研究においては

  1. IgA腎症における扁桃摘出+ステロイドパルス療法の適応基準の検討
  2. 難治性ネフローゼ症候群に対するミゾリビン投与法(パルス療法)の検討
  3. 関節リウマチ患者における生物製剤による内皮機能改善
  4. 関節リウマチ患者における血清fetuin濃度の検討
  5. 高知県における慢性腎臓病(CKD)ネットワークの構築と地域連携の推進
  6. 急性腎障害の尿中早期バイオマーカーの関発

などをおこなっております。今後は先に述べたように、急性腎不全の極早期の診断、治療介入による予後の改善や、関節リウマチにおけるLCAPや難治性腎疾患におけるLDLアフェレーシスなど血液浄化療法の臨床適応の研究も進めていきたいと考えています。

また高知県におけるCKDネットワークについては、腎臓内科の分野では慢性腎臓病(CKD)という疾患概念が導入され、非常に頻度が高いこと(日本全体で1400万人、高知県だけでも5万人)、心血管合併症が多く生命予後が悪い事、早期治療により予後の改善がはかれる事がわかりました。高知においては当教室と関連病院、高知市医師会が中心となり、CKD病診連携協議会が立ち上がり、当教室の関連病院・同門会の先生方にもご協力いただきまして、全国的にも注目される程、CKDの地域連携がスムーズに行っております。高知新聞にも掲載していただきました。今後この強いネットワーク生かした独自の疫学的な臨床研究を進めるとともに、厚生労働省研究班[今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討]並びに、[進行性腎障害に関する調査研究]の各班に少しでも貢献できるようにしております。ご協力頂いています先生方にこの場をお借りして御礼を申し上げるとともに、他の領域でも関連病院・同門会の先生方と連携した診療・研究体制を推進して行きたいと考えております。

高知新聞記事

再生医学的アプローチによる腎疾患の 高度先進医療の推進

腎疾患はcommon disease
血液透析患者数26万人  腎機能低下患者数1956万人

  1. 骨髄幹細胞と液性因子を用いた腎細胞の再生、分化
  2. iPS細胞およびESを用いた腎尿細管細胞の再生、分化
  3. 増殖因子を用いた 腎尿細管細胞の脱分化、再生In vivo

血液透析患者数は、全国で26万人を越え、腎機能低下の患者数は1900万人を越えています。

今後糖尿病性腎症 の増加、高齢化も加わり、さらに患者数の増加が予想され、抜本的対策が急務です。近年急性腎不全の頻度が増 加しており、主に尿細管細胞の再生をターゲットにし、上記の三点のアプローチにより腎疾患の高度先進医療の開 発に結びつく探求的臨床研究(Translational Research)を計画しています。1)骨髄幹細胞の誘導あるいは注入によ る腎機能の回復、2)iPS細胞を用いた腎尿細管細胞への分化誘導、3)各種増殖因子を用いた尿細管細胞の脱分 化(Dedifferentiation)の誘導と再生。申請者はES細胞などの研究実績が十分にあり、臨床に直結した先進的研究 を推進して行きたいと考えています。

また本研究結果を応用して、腎疾患の再生医療だけでなく、循環器疾患など の再生医療にも応用できる可能性があり、高知県における高度先進医療の推進に貢献できると考えております。



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