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研究紹介

研究のページへようこそ

私は、全ての医局員に、研究に携わって欲しいと思っています。
  • 医療者の仕事は、患者さんをよりよく治すことです。研究は自分が直接診療できない患者さんを治す行為です。
  • 医療者の前半の人生は、先人が行った研究で得られた知識が記載された教科書やマニュアルを見て診療します。後半の人生は教科書を作る側に回って欲しいと思います。
  • 研究は最高の道楽です。新しいことを知ることはとても楽しいことです。勉強することもとても楽しいことです。
  • 新しいことを発見したときの興奮を味わって欲しいと思っています。世界中で自分だけがこの重要な事実を知っている瞬間があるのです。
  • 世の中の役に立つ研究を成し遂げた人は、高い社会的称賛が得られます。誉れの気持ち、高い自己肯定感が得られます。研究は自分の価値を高める行為です。
高知大学精神科では、一人が主任研究者となり、皆が研究協力者となり、研究活動を行っています。現在、行っている研究をいくつかご紹介します。

1. 認知症者等へのニーズ調査に基づいた「予防からはじまる原因疾患別のBPSD包括的・実践的治療指針」の作成と検証研究(數井裕光)

認知症の人は、2012年時点65歳以上の高齢者の約7人に1人、2025年には、5人に1人の割合になると推計されています。認知症の人には、うつ、不安、幻覚、妄想などの行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)が出現しやすくなります。BPSDは、認知症本人の予後を悪くし、家族の介護負担の原因となるため、治療法の確立が待たれています。私たちは、我が国で広く使用できる実践的なBPSDに対する包括的・実践的な治療指針つくりをしています。

図:私たちが考えている包括的・実践的治療指針の全体図 図:私たちが考えている包括的・実践的治療指針の全体図

この治療指針の基本的な考え方は「BPSDは予防する」と「BPSDが出現した時に直ちに適切な対応法による治療を開始して悪化を防ぐ」の2点です。やむを得ない時に薬物治療を開始し、それでも治療困難な場合に限り、専門病院での短期入院治療を行います。適切な対応法を治療する際に、我々が運営している「認知症ちえのわnet」というウエブサイトを活用します。

この研究の全国の共同研究施設と研究者(敬称略)

高知大学・神経精神科学 數井裕光、上村直人、赤松正規、三宅健太郎、吉本康高、永倉和希、池田由美、大坪京子、北村美和子
大阪大学大学院医学系研究科
  • 精神医学分野:池田 学、吉山顕次、佐藤俊介、東 慎吾、川西由佳、末廣 聖、松本拓也、欠田恭輔、鈴木由希子、鐘本英輝、梅田寿美代、仲谷佳孝
  • 統合保健看護科学:山川みやえ
  • キャンパスライフ健康支援センター:工藤 喬
東京医療保健大学・医療情報学科 小杉尚子
熊本大学大学院・神経精神医学 橋本 衛
東京慈恵会医科大学・精神医学 品川俊一郎、互 健二
浅香山病院 釜江和恵
兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター 樫林哲雄
筑波大学大学院・障害福祉学 山中克夫、野口 代
認知症介護研究・研修東京センター 山口晴保
愛媛大学大学院医学系研究科 谷向 知

2. 治る認知症、特発性正常圧水頭症(iNPH)を自立できるまでに治すための診療方法の確立研究(數井裕光)

私たちは、iNPHの中でも、脳室系、シルビウス裂は拡大しているが、大脳縦裂や高位円蓋部は狭小化する「不均衡にクモ膜下腔が拡大している iNPH(Disproportionately Enlarged Subarachnoid space Hydrocephalus:DESH)」を対象に研究しています。DESHは地域在住の高齢者の1.1%に存在する高頻度の病態で、頭部MRIで発見しやすく、シャント術による治療成績が良いためです。早期発見と併存疾患の診断が予後を良くする鍵だと思っています。

DESH写真の白実線:脳梁角の鋭角化、細点線:高位円蓋部の狭小化粗点線:大脳縦裂の狭小化

3. 認知症と自動車運転 ―DLBの神経基盤に注目した運転能力評価方法の確立― (上村直人)

これまで高知大学精神科では、認知症と自動車運転の関連性を検討してきました。H15年からは厚生労働省の研究班にも参加し、認知症の背景疾患別の運転行動や交通事故発生率の違いを検討してきました。現在はレビー小体型認知症の神経基盤に着目した運転行動の特徴の分析や、運転能力の評価方法の確立に向けて、写真のような運転シミュレーターを用いて研究しています。また高知工科大学との共同研究として、運転能力評価機器の開発にも取り組んでいます。現在認知症と運転行動の関連性や運転能力の評価方法にゴールドスタンダードはありません。この問題は社会的にも非常に重要な課題であり、私たちはこれからも仲間を増やしながらこの課題を解決していきたいと考えています。また、認知症以外でも、発達障害の方や高次脳機能障害の方の運転も重要な課題です。興味のある方はぜひご連絡ください。

表1:認知症の背景疾患の違いによる運転行動・危険性の差異

認知症の背景疾患別運転行動、危険性、事故リスク
  交通事故率(名) 事故危険運転特徴
FTD(N=22) 63.6%(14) 信号無視、わき見運転、追突事故
AD(n=41) 39.0%(16) 迷子運転、枠入れで接触事故
VaD(n=20) 20%(4) 操作ミス、速度維持困難
全体(N=83) 40.9%(34) 認知症の原因で危険性の差異がある
厚生労働科学研究費補助金 長寿科学総合研究事業「痴呆性高齢者の自動車運転と権利擁護に関する研究」(主任研究者池田学)平成15-17年度総合研究報告書.2006


写真1:高知大学運転シミュレーターの様子

写真2:高知工科大学との共同研究による運転能力評価機器開発

4. 自閉症スペクトラム障害コミュニケーションプログラムの他の精神疾患への応用(泊り由希子)

コミュニケーションは社会生活を営む上で基盤となる活動です。統合失調症や転換性障害などの精神障害をもつ対象者はその障害特性からコミュニケーション上の深刻な悩みをもつ人が少なくないといわれています。何か効果のある支援は出来ないだろうかと模索している際に出会ったのがパッケージ化された大人の自閉症スペクトラム障害のためのコミュニケーションプログラムです。内容は実臨床で感じる対象者のコミュニケーション特性や悩みに合致している点が多く、自閉症スペクトラム障害以外の精神障害をもつ対象者に対しても有益ではないかと考えました。そこで本プログラムの他の精神疾患に対する有効性を検証する研究を行っています。

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