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骨軟部腫瘍グループ

 開講後20年間に治療に携わった骨軟部腫瘍患者は、321例(原発性悪性骨腫瘍31例、原発性悪性軟部腫瘍36例、良性骨軟部腫瘍254例)であったが、その後の10年間では、高知県の人口は減少しているにもかかわらず、悪性骨腫瘍40例、悪性軟部腫瘍140例を超え、良性骨軟部腫瘍患者も同様に増加傾向にあることから、県内の骨軟部腫瘍患者が集中していることが窺える。また、院内のがん患者に対する治療の進歩により骨転移を生じた患者の診療に携わる機会も増加してきている。
 四肢発生の高悪性度の骨軟部腫瘍に対しては、より良好な局所根治性や術後の患肢機能を求めて、1990年代後半から術前術後の補助化学療法を積極的に行い、術前の化学療法に奏功した症例では、切除縁を縮小し周囲の軟部組織を温存する縮小手術を試みている。特に悪性骨腫瘍の手術の際には、腫瘍切除後の再建法として、より生物学的でかつ長期にわたる機能維持を目指したパスツール処理骨を用い、血管柄付き腓骨骨移植との併用により患肢温存に努めている1)。
基礎的な研究としては、病理学教室との連携により、ヒト骨肉腫由来細胞株(HS-Os-1)2)やヒト明細胞肉腫由来細胞株の樹立とその性状の報告に貢献してきた。一般に固形悪性腫瘍
ではhypervascularityであるにも関わらず、組織のhypoxiaが生じている。そのため、放射線感受性が低いことが知られており、実際にHS-Os-1細胞株においても放射線による細胞のDNA障害やアポトーシスが誘導されにくいことが本学放射線医学教室から報告された3)。実際の骨肉腫患者における低酸素状態の関与については、低酸素状態のマーカーである低酸素誘導因子(HIF-1α)や血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を組織学的に評価すると、HIF-1α陽性は転移例で高率になっており、予後との関連や新たな治療ターゲットになる可能性が示唆された4)。

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また、近年、化学療法や放射線療法に抵抗性である脊索腫などの低悪性度の骨軟部腫瘍の再発や遠隔転移例に対するWT1ペプチド療法の臨床研究を本学免疫学教室の協力のもと開始している。脊索腫の多発肺転移が減少・縮小した症例5)を経験しており、今後、標準的治療との併用や他の肉腫に対しても治療を検討していく予定である。
 良性骨腫瘍においては、手術の際に可能な限り小侵襲手術を目指し、小さな開窓から腫瘍掻爬後に、リン酸カルシウム骨セメント(CPC)を充填する方法を行ってきた6,7)。このセメントは開発当初から当教室も積極的に関わっており、多種多様な人工骨が開発された現在においても、その操作性、硬化後の強度や薬剤の徐放性において他の製剤より有利な点も多く、疾患毎に適応を決めて使用している。
 また、骨転移に対しては、2008年以降、MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)を用いた新たな治療法の臨床研究に精力的に取り組んでいる。この治療は、体内の標的組織をMRIで確認しながら、その部位に多数の超音波を集束させることで局所的な組織温度を上昇させる焼灼療法であり、他の分野では子宮筋腫や乳癌、脳腫瘍などで応用されている。現在はこの作用を利用した疼痛緩和を目的としており、放射線外照射後に残存した痛みに対しても良好な治療効果を確認できている8)。同時に、骨転移の増大を抑える作用も確認され始めているため、今後は痛みの伴わない骨転移に対しても治療を実施していく予定である。また、腫瘍焼灼作用を利用して良性軟部腫瘍に対する焼灼療法や疼痛緩和作用を利用して変形性関節症(脊椎椎間関節を含む)に伴う疼痛制御療法としての臨床研究および基礎研究も平行して実施中であり、新たな治療法の確立を目指している。

文責:川崎元敬、溝渕弘夫、南場寛文、加藤友也

参考文献

1.Noguchi, M., Mizobuchi, H., Kawasaki, M., et al.: An intramedullary free vascularized fibular graft combined with pasteurized autologous bone graft in leg reconstruction for patients with osteosarcoma. J Reconstr Microsurg 24: 525-530, 2008.


2.Sonobe, H., Mizobuchi, H., Manabe, Y, et al.: Morphological characterization of a newly established human osteosarcoma cell line, HS-Os-1, revealing its distinct osteoblastic nature. Virchows Arch B Cell Pathol Incl Mol Pathol 60: 181-187, 1991.


3.Ogawa, Y., Takahashi, T., Kobayashi, T., et al.: Mechanism of apoptotic resistance of human osteosarcoma cell line, HS-Os-1, against irradiation. Int J Mol Med 12: 453-458, 2003.


4.Mizobuchi, H., Garcia-Castellano, J. M., Philip, S., et al.: Hypoxia markers in human osteosarcoma: an exploratory study. Clin Orthop Relat Res 466: 2052-2059, 2008.


5.南場寛文、川崎元敬、谷俊一、他.WT-1ペプチド療法が奏功した仙骨脊索腫術後多発肺転移の1例.日本整形外科学会雑誌84 p958.


6.Mizobuchi, H., Tani, T., Takemasa, R, et al.: Mechanical properties of the femur filled with calcium phosphate cement under torsional loading: a model in rabbits. J Orthop Sci 7: 562-569, 2002.


7.山本博司、溝渕弘夫、柴田敏博、他. 整形外科領域におけるリン酸カルシウム骨ペースト(CPC95)の臨床評価.薬理と治療26: 189-209, 1998.


8.Kawasaki, M., Nanba, H., Kato, T., et al.: Efficacy of magnetic resonance-guided focused ultrasound surgery for the pain palliation of bone metastases. ISTU2010 Program&Abstract Book p91.

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