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痛み研究グループ

 私たち痛みグループでは、治療法に乏しいCRPSなどの慢性疼痛をターゲットに、その痛みの原因や痛みの感じ方、また新しい痛み治療を目指して研究を行っている。

 ①ギプス固定後などに生じる拘縮や、慢性腰痛の原因Multiple operated backの病態の一つとして考えられる組織の癒着などが、長引く痛みの原因の一つではないかと考え、その病態についての研究を行ってきた。モデル動物は大変興味深い変化を認めている。すなわち、1.拘縮に陥った前肢(以下患肢)はグルーミング、摂食動作、歩行などのADL動作に用いることはない、2.患肢を触られると逃避行動を示す、3.モデル動物の脊髄後角細胞は関節運動や痛みなどの伝達に関与するWDRニューロンの数が増加している、等のことがわかってきた。

(Ushida T et al. J Orthop Sci 2001)
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 次にこれらの疼痛メカニズムを脊髄レベルで詳しく調査するため、脊髄及びDRG細胞をターゲットに、免疫組織染色を用い、神経細胞の可塑的変化を探った。その結果、DRG細胞に着目すると、痛み関連ペプチドのCGRP陽性細胞数は健側と患側で有意な差はみとめられなかったものの、CGRP陽性細胞の大きさの分布を比較すると、興味深いことに拘縮を生じた患側で、CGRP陽性の大型細胞の割合が増加していた。

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 さらに、脊髄後角に注目してみると、侵害受容性ニューロンが収束するⅠ・Ⅱ層ではCGRP陽性細胞数に左右差は認められなかったものの、大型ニューロンの収束の多いⅢ・Ⅳ層を比較すると拘縮側でその数が有意に増加していることがわかった。

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(Nishigami T et al. Neurosci Lett. 2009)

 アロデニアモデルして知られる神経切断モデルでは、このような脊髄後角におけるCGRP陽性細胞の細胞径分布が、我々の拘縮モデルと同様の変化、すなわち本来非侵害刺激を司る大細胞の割合が増えることが報告されており、不動化による疼痛憎悪⇒痛みの慢性化につながるものと考えられる。

 ②大脳皮質へ向かう痛覚伝導路には、痛みの強さや刺激の位置を認識する感覚・識別的側面と、痛みに伴う不快感を認識する情動的側面(大脳辺縁系)が存在することが知られている。我々は、痛みの最終点である認知という点に注目し、近年ニューロイメージング法として確立しているfMRIを用いて、痛覚認知に関する研究を行っている。健常者の右手掌に対して機械的侵害刺激を行うと、主に両側の視床、S1、 S2、島、帯状回、小脳における神経活動性の亢進が検出されており、様々な脳イメージングの総説(Human Pain Matrix)からみても矛盾しない結果が認められた。

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 一方、難治性疼痛など病的状態に陥った疼痛患者が経験する痛みは強さの程度だけでなく種類や特性にも変化が生じているものと思われる。そこで我々はVon Frey Fiberを用いて神経因性疼痛患者手のアロデニア領域への侵害刺激を行った。その結果患者群では通常(健常者)のPain Matrix以外での広範囲な脳活動が認められた。

(Ikemoto T et al. Pain Res 2003)
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 さらに我々は、痛みに伴う不快感を調査するため、慢性的なアロデニア症状を有する難治性神経因性疼痛患者に対して、手掌のアロデニア部位が刷毛で触られている動画を視覚的に提示した場合の脳内神経活動についてfMRIでの検討を行った。その結果、前頭葉及び帯状回領域等の疼痛刺激に対する不快感に反応しやすい脳部位に有意な活動性が検出された。

(Ushida T, et al Brain Topogr. 2005)
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 さらに、健常者をターゲットとして痛みの不快感の調査を行った。本研究ではビデオ内で注射針が手を突いた映像(自分の手vs自分以外の手)を見た際に生じる脳内神経活動をfMRIで検討した。その結果注射手技の視覚情報に対して警戒感や恐怖感などの情動的反応を体験したグループでは島葉前方領域を中心に有意な神経活動が検出された。

(Ushida T, et al . Neurosci Lett. 2009)
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 個人の思い込みにより、受ける痛みの強さが増減することが知られており、不快感を生み出す情動反応は、痛みの本質に極めて重要な要素であると考えられる。

-その他の研究について(詳細略)-
・Brain cortical activation is altered with improvement of pain. (Ikemoto T et al Pain Res 2005)
・The differences of brain cortical activations between superficial pain and deep pain. (Ikemoto T et al Pain Res 2006)
・Intradermal administration of magnesium sulphate and magnesium chloride produces hypesthesia to mechanical but hyperalgesia to heat stimuli in humans. (Ushida T et al. J Neuroinflammation. 2009)


【文責:池本竜則、牛田享宏】

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