当科の紹介医師・医学生向け

 メニエール病

  当科での主要な研究テーマの一つは、内耳機能を形態学的・生理学的に解明することです。とくに、メニエール病を中心とした、内耳液の恒常性維持に関する研究を行っています。内耳は、内リンパ液と外リンパ液が満たされた世界です。メニエール病では、これら2つのリンパ液のバランスが崩れています。それでは、これらのリンパ液のバランスをとっているものは何かということが重要となります。これまでの当科における研究結果からは、メニエール病の患者さんでは抗利尿ホルモンが、多くなっています。このホルモンは、腎臓でレセプターに結合すると、水を選択的に通過させる水チャンネルを発現させます。腎臓と同様のシステムが内耳にも存在することを発見し、抗利尿ホルモンで内リンパ液と外リンパ液のバランスが崩れることがわかりました(右図)。さらに、このホルモンでめまいが起こることも分かりはじめています。このように、疾患と関連のある研究を進めていくことで、新しい治療法の開発を目指しています。

内耳血管条に発現した水チャンネル

内耳血管条に発現した水チャンネル

 喉頭の神経調節機構

内喉頭筋の筋紡錘の電子顕微鏡所見

内喉頭筋の筋紡錘の電子顕微鏡所見

  喉頭は発声・呼吸・嚥下など多彩な機能を担っています。これらの機能は内喉頭筋の巧妙な運動により遂行されますが,そのためには各内喉頭筋の協調的および相反的な筋活動の制御機構が必要となります。当科ではこのような神経調節機構について形態学的な面から解明を行ってきました。その結果、内喉頭筋ではほとんどの筋に伸展受容器である筋紡錘の存在を確認することができ(左図)、筋緊張調節のためのフィードバック機構を担っていることが明らかになりました。また、内喉頭筋に分布する知覚神経終末を組織学的に観察すると、自由終末,葉状終末,らせん終末,終末球など多様な形態の知覚神経終末を認め、知覚受容器として機能していることも明らかにしました。すなわち、喉頭においては筋紡錘と知覚神経終末が補完的に機能し、複雑な喉頭機能の調節に関与していることになります。

 嚥下機能の加齢変化

  嚥下は多数の筋が精密かつ協調的な運動を行うことにより遂行される一連の運動です。この嚥下機能が加齢とともに低下することはよく知られており、高齢者では誤嚥による肺炎が主要な死因の一つともなっています。当科では、加齢による嚥下機能の変化様式について、多角的に解析を行ってきました。嚥下内視鏡検査・嚥下造影検査・嚥下圧検査によると、特に70歳以上の高齢者では咽頭期嚥下の変化として嚥下反射の惹起性の低下、食塊の咽頭通過時間の延長、食道入口部括約機構の機能障害などが見られることを明らかにしました。特に食道入口部の機能変化では食道入口部の開大障害(右図)や、食道入口部括約帯の拡大が見られることを明らかにし、食物の通過障害につながることを示しました。また、これらの嚥下機能低下は、唐辛子の辛み成分であるカプサイシンを投与することにより改善することを明らかにし、加齢による嚥下機能障害の治療あるいは予防法としてのカプサイシンの有用性を示しました。

高齢者における食道入口部の嚥下時圧波形

高齢者における食道入口部の嚥下時圧波形