教授挨拶

 当科は、消化器外科・乳腺内分泌外科・小児外科を担当し、高知県民の健康長寿日本一を目指して、高度技能手術を行い、最先端の医学研究を推進するだけでなく、県内唯一の大学医学部に属する外科学講座として将来を担う医学生、研修医および若手外科医の育成教育にも専念しております。
 外科医は欧米では最も尊敬される職業の一つであり、King of Doctorともいわれています。引退寸前の外科医たちを対象にした日本外科学会のアンケート調査において、「もう一度医師になったら何科を選択しますか?」という質問に対し、およそ85%の外科医が再び外科医になりたいと返答しています。
 外科医は手術を介して世の中に貢献する職業です。究極の外科医像は、卓越した手術を行い、次世代にも自分の技を伝授し、患者さんの命を救える外科医です。いつまでたっても完成しない理想的な手術を追い求めながら、手術を介して社会に貢献し、人生を全うできたら、これ以上の幸せはないと思います。
 外科医を継続していく上で常に心がけていることは、手術手技を少しでも高めるための工夫です。工夫と言っても、難しいことは何もしていません。最も大切にしているのは自身の健康維持です。長時間の手術に耐えるために、日ごろから体力を養うための運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリング、軽登山など)は欠かしません。また難易度の高い手術を執刀するために日々勉強し、学術的な活動(学会発表・論文執筆)も行っています。
 私は手先が器用ではありません。また才能にも恵まれていません。こんな凡人でも30年以上にわたり外科医として生計を立て、いまだに進歩できるのではないかと奮闘しています。これが外科の魅力であり、難しさです。
 外科医は手術手技を磨くことを生業にすべきです。患者さんは誰でも「手術の上手な外科医に手術をしてもらいたい」と願っているからです。その期待に応えることこそ外科医の最大の使命であり、社会貢献でもあります。
 それでは手術手技を磨くにはどうしたらいいのでしょうか?最も推奨したい方法は、優れた指導者(メンター)から直接手術の手ほどきを受けることです。多少厳しい指導を受けるかもしれません。しかし、一生使える技を伝授していただける訳ですから、それ相応の気構えで臨むべきでしょう。修行の後には必ずいいことが待っています。自分を一人前の外科医に引き上げてくれるメンターとの出会いこそ、外科医人生のハイライトと言っても過言ではありません。師匠から見込まれる弟子ほど大成しやすいのは、古今東西どんな世界でも同じです。
 一人前の外科医になりたかったら、しっかり勉強して、しっかり患者さんを診ることが求められます。現代医療の中で大きなウェイトを占めるのは、自分の担当した患者さんの診断や治療に関する最新の知識を文献(主に英語論文)から学ぶ、Evidence Based Medicine (EBM)ではないでしょうか。EBMをしても、どうしても解決できない問題点は、自ら研究を立ち上げ、問題点を解明していくしか方法がないのも事実です。こうした研究を通じて研究マインドは涵養されます。また医学の勉強や研究は手術手技の向上に役立つだけでなく、医師に必要な論理的思考力を鍛える上でもきわめて有効であり、一石二鳥といえます。
 私の夢は、研究マインドを持った手術の上手な外科医(Academic Surgeon)を一人でも多く育成して、高知県、日本そして世界の外科医療レベル向上に少しでも貢献することです。
教授 花﨑和弘
高知大学医学部外科学講座外科1