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尿失禁根治手術 (TVT手術/TOT手術)

腹圧性尿失禁

 女性にみられる尿失禁は、重い物を持ち上げたり、くしゃみや咳をした時などお腹に力が入ったときに尿がもれてしまう腹圧性(ふくあつせい)尿失禁と、急に尿がしたくなったり(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまう切迫性尿失禁と、それらの混合したものであり、切迫性尿失禁の場合は薬での治療となります。
 腹圧性尿失禁は、出産や骨盤内の手術、加齢変化などが原因となって膀胱や尿道を支える骨盤底の筋肉の力が弱くなっているために生じます。症状が進行した場合は椅子から立ち上がった時や、歩行時にも尿失禁が生じます。成人女性の4人に1人、40歳以上では女性の3人に1人が、何らかの尿トラブルに悩んでいるといわれています。その中でも多いのが、腹圧性尿失禁の悩みです。生活の質の向上のためにも専門医での診断、治療を受けることをお勧め致します。

 治療法はこれらの骨盤底筋群を刺激する体操や薬物療法などの保存的療法があります。また、肥満の方では、減量が有効なことがあります。これらの保存的療法で充分な効果が得られない場合には手術の適応となります。ポリプロピレン製のテープを尿道の下に通して尿道を支える「TVT手術」または「TOT手術」は、体への負担が少なく、長期成績も優れています。その他TFS (Tissue Fixation System)手術といった尿失禁手術もあります。
いずれもこれから妊娠、出産を予定している人には禁忌ですが、合併症のリスクが低く、体への負担も少ないため健康に問題がなければ高齢者でも可能な手術です。

外来での検査

問診や検尿の他に、

  1. 排尿日誌:数日間つけてもらうことで排尿状態や失禁タイプを把握・推測することができます。。

  2. パッドテスト:水分摂取後に、60分間決められた動作や運動を行い、検査前後のパッド重量を計測し、尿失禁の重症度を判定します。

  3. 残尿量測定:残尿がないか超音波で調べます。

  4. チェーン膀胱尿道造影検査:膀胱にチェーンのついたカテーテルを挿入し、造影剤を注入します。膀胱頚部の広がり具合や尿道と膀胱の間の角度を測定します。

その他、必要に応じてMRI、尿流動態検査、膀胱鏡検査などの詳しい検査を行うこともあります。

腹圧性尿失禁根治術 TVT (tension free vaginal tape) 手術

 TVT手術は、現在健康保険が適応される尿失禁手術のスタンダードとなります。
TVTとは無張力で膣壁を支持するテープの意味で、中部尿道を膣壁側より支持することにより、腹圧上昇時の尿失禁を防ぐものです。特徴として短時間(15~30分)での手術が可能で、約5mmの傷が腹部に2ヶ所、膣壁に1ヶ所だけで、局所麻酔と鎮痛剤での実施が可能など体への侵襲が低いことが上げられます。長期の成績(11.5年)では、客観的治癒率 90%、自覚的治癒率77%、改善20%、不成功3%と優れた成績が報告されています。再発や合併症の頻度も少なく、術後短期間での退院が可能です。

TVT尿失禁根治術のスケジュール

 当科におけるTVT手術のスケジュールを紹介します。

 外来で腹圧性尿失禁の診断、評価を行った後、手術前に必要な検査を行います。
この検査の結果、手術が決定しますと手術日の前日から数日前に入院していただくようになります。手術当日より摂食、術翌日より歩行、自排尿が可能です。点滴も術翌日までです。排尿状態を確認して手術後数日(最短では手術翌日)での退院が可能です。退院後は手術後1~2週間で傷の治癒や排尿状態を確認しますが、以後は1ヶ月後、3ヶ月後と間隔をあけて外来での経過観察を行っていきます。


 当科では平成11年11月よりTVT手術を開始しておりますが、患者さん全員、術後に強い排尿困難を認めず、早期の自排尿が可能で、その他、重い合併症もみられず、術後早期の退院が可能でした。退院後、全員腹圧性尿失禁は手術直後より著明に改善し、仕事や運動時の腹圧性尿失禁が消失するか極めて軽微となっています。腹圧性尿失禁に対するTVT手術は、その適応が認められる場合、治療効果の永続性や安全性に優れる手術法だと考えられます。

写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社

TOT (Trans-Obturator Tape) 手術

 腹圧性尿失禁手術としてTVT手術が一般的ですが、テープが膀胱の近くを通過するために、数%の確率で、手術時に膀胱穿刺という合併症があること、ごくまれに恥骨の裏を走る血管の損傷、腸管損傷といった重篤な合併症も起こりえます。骨盤内手術を受けたことのある方では危険性が高くなるともいわれています。
 このような合併症を改善するために、TOT手術も行われるようになってきました。この手術では腟前壁と両側大腿内側の付け根に小さい切開をおき、その間にテープを通します。この場所には重篤な合併症を起こす臓器がありませんので、TOT手術はTVT手術よりも安全性が高くなっています。
しかし、穿刺の際に閉鎖神経を傷つけることがあり、手術後に大腿内側に違和感や痛みがみられることがあります。また、TVT手術に比べ、TOT手術は支えが弱くなるため、重症の腹圧性尿失禁には効果が低くなります。

新しい腹圧性尿失禁手術 TFS (Tissue Fixation System) 手術

  • 出典:「インテグラル理論から考える女性の骨盤底疾患」
    著:Peter Papa Petros

  • TFSで使用する器具、ポリプロピレンテープ

 TVTで起こりうる合併症や、重症例では効果が低くなるTOTの欠点を克服すべく考案されたのがTFS手術です。
 このため、当科では、TVTの合併症を改善し、治療効果も同等の新しい手術法としてTFS手術も行って参りました。その特徴として、TVT手術と同様にぐらぐらになった尿道をテープで支えますが、腹壁ではなく恥骨下の尿生殖隔膜というところに固定します。この術式では、TVTで起こりうる重篤な合併症が起こりにくく、TVT手術と同様に恥骨尿道靭帯を補強できるので、重症尿失禁も治療可能です。

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