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コラム -医療情報提供-

漢方のはなし

 皆さんは漢方薬をのんだことがありますか。2012年のある調査では80%以上の医師が日常的に漢方を処方していることがわかっています。多くの医師が病院で漢方を処方しているのです。漢方のイメージはいかがでしょうか。患者さんにお尋ねすると「中国の薬?」「副作用がない?」などいろいろなイメージをもたれているようですが、まず一つ言えることは、漢方は日本の伝統医学であるということです。
 漢方の原型は紀元2世紀頃、今から1800年ほど前の中国で成立したと言われています。 その後、日本へは7世紀以降に中国から大量に輸入されましたが、本格的な漢方医学が根付いたのは16世紀以降で、室町時代に明の医学が伝わり、効果が高かったためひろまり、江戸時代に鎖国の影響もあって日本独自の発展をしたそうです。このように漢方は日本独自の伝統医学なのです。
 では漢方で使われる薬とはどのような薬でしょうか。
 漢方薬はいくつかの生薬(しょうやく)を決められた分量で組み合わせて作られた薬です。生薬というのは化学的に合成されたものではなく天然物そのもの、あるいは蒸したり、焼いたりといった簡単な加工をしたものをいい、イメージとしては草の根っこや茎、木の皮や実などです。それぞれの生薬が多くの有効成分を含んでいるので、いろいろな生薬を組み合わせた漢方薬は、ひとつの薬でもさまざまな作用を持ち、複数の病気や症状にも効きます。例えば葛根湯は、くずの根っこやシナモン、ナツメや生姜などの7種類の生薬で構成されていて、それぞれの生薬の相互作用で効果を現わします。漢方薬は生薬のハーモニーなのです。また漢方薬の形には、昔ながらに生薬を水でグツグツ煮だして作る「煎じ薬」と煎じ薬を乾かして顆粒などに加工した「エキス剤」というものがあります。煎じ薬がコーヒー豆から入れるコーヒーとすると、エキス剤はインスタントコーヒーのイメージです。
 これに対して、西洋薬は化学合成されたもので有効成分が単一です。菌を殺したり、熱や痛みをとる、血圧を下げるなど一つの症状や病気に対して強い効果があります。
 このよう漢方医学と西洋医学では使う薬も異なっており、それぞれ別の医学です。 イメージとしては、西洋医学は病気の原因を調べてそれをピンポイントに治療し、 漢方医学は症状から身体の不調和を見つけ全体を整えて治療します。
 どちらが良いかではなく、それぞれに得意、不得意分野があるので、両方の得意分野を活かした治療を受けるのがよいと考えます。中国でも韓国でも伝統医学と西洋医学は医師免許が別々で、両方同時に治療を受けるのは難しいそうですが、日本では同時に両方の治療を受けられるという利点があります。
 漢方の得意分野を、どんなときによく使われるかの例を挙げて説明しますと、 疲れやすい、風邪を引きやすいなどの虚弱体質の方や冷え症やのぼせなどにもよく使われます。特に身体を温めて冷えだけでなく、痛みや様々な症状を治す薬があるのは漢方ならではです。そして色々な検査でも異常がないけれどつらい症状がある、という方は結構いらっしゃいますが、そんな時は症状に対して薬を使う、漢方の出番だと思います。
 またストレスからくる様々な心と体の不調にもよく使われます。漢方では「心と身体は一体である」という考え方があり、症状のある部分だけを治療するのではなく、心身全体の調和をはかることを目標としています。
そして西洋医学の治療の副作用を和らげるためにも、漢方薬が使われています。例えば、抗がん剤治療で、足がしびれる、貧血になる、吐き気があるなどの副作用が出たときにも使われています。
 最後に漢方薬の効果と副作用などについてお話しします。
 漢方薬は長く飲まないと効かないのでしょうか。これは薬の種類や症状によって大きな差があります。例えば、こむら返りに使う漢方薬は大抵、1回で効きます。また風邪のような急性の症状には1~2日で効くことが多いです。しかし漢方薬は慢性の症状に使われることも多く、その場合は長く飲んで頂くこともありますが、大概は1-2ヶ月で効果が表れてくることが多いです。
 また漢方には副作用がないのでしょうか。
 漢方薬にも副作用はあります。一番多いのは胃もたれなどの胃の不調、二番目は発疹、痒みなど皮膚の症状です。まれに間質性肺炎や肝機能障害も起こりえます。
 漢方は保険が効かないのでしょうか。
 エキス剤などの148処方と生薬163種類は保険がききます。その生薬を使った煎じ薬も保険がききますが、煎じ薬を扱っている病院は多くありません。煎じ薬は、病院によっては保険が効かないところがあるので、確認して受診してください。
 漢方にも西洋医学にも得意分野、不得意分野があります。両方を上手に活かした治療をお勧めします。漢方治療に興味がある方はまずは漢方外来などで相談してみてください。


◎ 著者プロフィール
氏名:松元 かおり(マツモト カオリ)
所属:高知大学医学部附属病院総合診療部
役職:医師 

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