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コラム -医療情報提供-

パーキンソン病について

 高知県では、パーキンソン病の発症年齢の幅は広く20-90歳位までですが、65-70歳の間が最多です。県内には約1,500人の患者さんがおいでることになります。
 この病気では、脳の中の黒質から線条体に延びる神経がまず障害されます。しかし、パーキンソン病と診断される時期の患者さんの頭MRIは異常ありません。
 最近明らかになってきたこととして、嗅覚低下、便秘、レム睡眠中に夢の中でパートナーを叩いたり蹴ったりするレム睡眠期行動異常がある場合は、後にパーキンソン病になる確率が高いといわれています。遺伝子異常をおもちの方は素因を持っていることになります。
 初発症状は3つです。指・足タップや肘から先を回内・回外するのが遅くなるのは「無動・寡動」です。筋肉や関節が固くなる「筋強剛」は関節を動かした時の抵抗で判断します。「振戦」のなかで特徴的なのは、4-6Hzの周波数で、診察室に入ってきた直後ではなく、話が進んで会話に集中した時に手や足が震える安静時振戦です。ほとんどの場合で症状が片側から始まり、数年以上かけて両側性になります。3つのなかの「無動・寡動」プラス「筋強剛または振戦」があり、片側からの発症であり、かつ薬物が有効であれば、診断確定です。ダットスキャンという検査では、正常人よりは取り込みが低く、最初に左側から症状が出現した場合、右脳の取り込みがより低くなります。
 診断がついても、全員の患者さんにすぐに薬物治療を始めるわけではありません。ヨガや太極拳、プールでの歩行、散歩を行うと、運動機能が維持されるという研究結果もあります。薬物治療なしで運動を行ってもらい、その後に少しずつ症状が進行して、患者さんが日常生活や仕事に支障を感じ始めるころに、相談のうえで薬物治療を開始します。
 薬物治療を開始すると、1日に数回以内の服薬で症状が緩和されます。高齢者または認知機能障害がありそうな時にはL-ドパ製剤をお勧めします。いっぽう、若くて認知機能障害などがない時には、受容体賦活薬などをお勧めします。
脳内では病気は少しずつ進行しますが、毎日の生活の中で進行を意識することはほとんどありません。平均して1年に1回程度、薬剤の増量が必要です。
 開始して平均10年は、大きな問題なく日常生活を送ることができます。人によっては3-5年経過したころから、内服後にかなり時間が経過してからやっと効果が出現したり、効果の減退が早くなる現象=オン・オフ現象がおこります。その後にジスキネジアといって、体がねじれる様な不随意運動が出現することがあります。オン・オフ現象とジスキネジアを合わせて運動合併症と呼んでいます。年齢、病状に合わせて、L-ドパ製剤の内服、受容体賦活薬の内服や貼布をお勧めして、治療を進めてゆきます。
 寿命は長いことが知られています。ただ、病気の最後のほうでは車いすでの生活時間が長くなり、骨折、肺炎、認知症を併発する確率が高くなります。
 日常生活においての注意点を以下に述べます。
 家に帰ると急に引きずり歩行になることがあります。家に帰っても、歩くときは足をあげて、腕を振って、前をむいて歩いてください。  一日10分でも20分でも、歩く練習をすることが大事です。配偶者などに一緒に歩いてもらいましょう。歩く場所は、廊下、部屋の中を行ったり来たりでかまいません。足を上げて、腕を振って、前を向いて歩きましょう。
 2つのことを同時に行うことが苦手です。洗濯物を両手に抱えて2階まで上がる、みそ汁などをお盆にのせて両手に持って歩く、時に転倒しやすいです。これには注意して、片手を開けるようにしてください。
 これ以外には、パーキンソン病において、やってはいけないことはなく、食事制限も必要ありません。仕事は可能な限り続けるほうが良いです。 
 仕事を辞めてからも、楽しみながら、歩行、水泳、ヨガ、太極拳などの運動をしましょう。大きな声を出す発声練習も大事です。家事、仕事は普通の人と同じように行うことが大切です。夜はよく休み、また規則正しく薬を服薬しましょう。旅行、海外旅行もOKです。病気のことを考えてくよくよせずに、配偶者や友人と楽しく過ごしましょう。 


◎ 著者プロフィール
氏名:大﨑 康史(オオサキ ヤスシ)
所属:高知大学医学部附属病院 脳神経内科
役職:講師

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