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コラム -医療情報提供-

子供の脱腸(鼠径ヘルニア)は自然に治ることはありますか?

 子供の鼠径ヘルニアは一般的に脱腸と呼ばれます。
 足の付け根の鼠径部にある穴からお腹のなかの臓器が外にでたもので男の子では腸が出ることが多く女の子では腸以外に卵巣や子宮がでることもあります。この穴は腹膜症状突起と呼ばれ男の子では胎児期にお腹の中で発生した精巣が陰嚢に下降する際に発生します。女の子では卵巣と子宮を固定する靱帯が通っています。多くのお子さんは出生時にこの穴は閉じていますが閉じない場合に鼠径ヘルニアが発症することがあります。
 穴が閉じないで生まれたあかちゃんは自然に閉じることはあるのか?
 答えは「閉じることがあります」。
 生まれて3ヶ月前後から穴が閉じ始めて脱出する頻度が減っていきます。歩行がはじまる1歳までに80%前後の鼠径ヘルニアで脱出の症状が見られなくなります。
 でも注意して頂きたいことが2つあります。
 一つは穴が閉じ始めると一旦出たものが戻らない嵌頓という状態になり長時間放置すると脱出したものの血流が悪くなる危険があります。嵌頓すると突然不機嫌となり次第に鼠径部が硬くなりますので鼠径ヘルニアのあるお子様はオムツ交換の時に鼠径部を確認して下さい。
 もう一つは鼠径部の膨らみがなくなっても穴が完全に閉鎖しているとは限らないことです。
 鼠径ヘルニアの手術の時に脱出することのなかった反対側をお腹のなかから調べると30%前後に穴が空いています。穴が開いていても穴の形や方向などから必ずしもお腹の臓器が脱出するわけではありませんが将来ヘルニアの発症する可能性はあります。
 一旦治ったと思った鼠径ヘルニアが幼稚園や小学校になって発症するのはこのためです。小さいころにまったく鼠径ヘルニアの症状がない子供たちが途中でヘルニアになるのも生まれながら小さい穴が開いていたためと考えられます。
 鼠径ヘルニアは自然に閉鎖する可能性があるのですがそれは新生児から乳児に見られる鼠径ヘルニアと思って下さい。
 1歳までに自然治癒しなかった場合や、1歳以降に初めて発症した場合は残念ながら自然に閉鎖する可能性はほとんどありませんので小児科あるいは小児外科を受診して下さい。


◎ 著者プロフィール
氏名:大畠 雅之(オオバタケ マサユキ)
所属:高知大学医学部附属病院 小児外科
役職:特任教授

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