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コラム -医療情報提供-

バセドウ病について

 甲状腺からホルモンが出過ぎて様々な症状が起こる、「甲状腺機能亢進症」と言う状態がありますが、バセドウ病は、この「甲状腺機能亢進症」の原因として、一番多いものです。

 甲状腺は首の前の方、のど仏のすぐ下になる臓器で、新陳代謝を活発にするホルモンを作っています。新陳代謝を活発にするホルモンですから、ホルモンが出すぎてしまうと、全身の新陳代謝が活発になりすぎてしまい、また、交感神経という自律神経の働きも活発になりすぎてしまいます。
 ですから、汗を異常にかいたり、暑がりになったり、手が震えたり、ドキドキしたり、食欲が増加するなどの、様々な症状が起こってきます。

 では、バセドウ病の原因とはいったい何なのでしょうか。
 我々の体には、本来自分の体を守るための働きとして、「免疫」というものがあります。この免疫が自分自身の甲状腺に反応してしまい、甲状腺に対する「抗体」を作ってしまうことがあります。この甲状腺に対する抗体によって、甲状腺が常に刺激されてしまい、勝手にホルモンを作ってしまう状態になるのが、バセドウ病です。
 では、なぜ甲状腺に対する抗体が出来てしまうのでしょうか。これは、元々このようなことを起こしやすい体質を遺伝的に持っているところに、ストレスや感染などの環境的な要因が加わって起こると考えられています。

 バセドウ病の治療はどうすれば良いのでしょうか。
 現在行われている治療法は、大きく3つに分かれています。
 まず一つ目ですが、お薬を飲むことによって治療する方法です。お薬としては、主に「抗甲状腺薬」というものが使われます。これは、甲状腺ホルモンの合成を抑えることによって、血液中の甲状腺ホルモンの量を正常にするお薬です。
 二つ目の治療法は、「アイソトープ療法」と呼ばれる治療法です。これは、放射線を出す性質を持ったヨード、放射性ヨードを内服する方法です。内服した放射性ヨードは甲状腺に取り込まれますが、取り込まれた甲状腺で放射線を出して、甲状腺の細胞を壊していきます。細胞が壊れれば、甲状腺ホルモンが作られなくなりますから、これによって、甲状腺ホルモンの働きを正常にすることが出来ます。
 三つ目は手術療法で、甲状腺の一部を残して、物理的に取ってしまう方法です。日本では、一つ目の、抗甲状腺薬による治療が主に行われていますが、副作用や、内服しても甲状腺機能が低下しない場合など、内服での治療が難しい場合には、二つ目のアイソトープ療法が選択されることが多いようです。

 バセドウ病の方の日常生活についてですが、いくつか注意していただきたいことがありますので、述べさせていただきます。
 まず、抗甲状腺薬で治療を開始した時ですが、お薬は必ず忘れずに内服するようにしてください。また、抗甲状腺薬には「無顆粒球症」という、急に白血球の数が減ってしまうという副作用があります。頻度は高くありませんが、これが起こると非常に危険ですので、抗甲状腺薬を飲み始めてから、急に喉が痛くなり、高熱が出たといった症状が出た場合は、我慢せずにすぐに医療機関を受診してください。
 仕事についてですが、甲状腺機能が落ち着くまでは、心身に負担のかかる作業は避けることが望ましいでしょう。重労働されている方は、一時的に軽作業に切り替えることなど考えた方が良いでしょう。甲状腺機能が落ち着けば、基本的に仕事に制限はありません。
 運動も同様で、甲状腺機能が落ち着くまでは激しい運動は避けるようにしてください。また、喫煙は「バセドウ病の眼球突出」を明らかに悪くさせますので、是非禁煙をしてください。
 飲酒はそのようなことはありませんが、甲状腺ホルモンが高い間はほどほどにした方が望ましいでしょう。食事については特に制限はありません。
 海藻類をどうすれば良いのか、という質問は良くありますが、制限することでバセドウ病が治りやすい、という証拠はありません。ですから、過剰な海藻類の摂取は避ける、程度で良いと思います。

 バセドウ病は200〜400人に一人程度でみられる、比較的よくみられる病気です。甲状腺ホルモンを正常にすることが出来れば、普通の方と変わらない生活を送ることが出来ます。
 また、その治療法も様々なものがあり、それぞれの患者さんにとって、最適な治療法を選択することが重要です。


◎ 著者プロフィール
氏名:中山 修一(ナカヤマ シュウイチ)
所属:高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科
役職:助教

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