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コラム -医療情報提供-

嚥下障害とその対応

 『嚥下(えんげ)』とは、食物を口へ取り込み、それを噛み砕き飲み込んで食道を経て胃へ送り込むことを指します。そのどこかに問題が起きてしまうことを『嚥下障害』と言い、食物が胃ではなく、気管や肺へ誤って入り込んでしまうことを『誤嚥』と言います。
 嚥下障害は食べる楽しみを損なうばかりではなく、低栄養、また誤嚥性肺炎という誤嚥に伴う肺炎の発症を招きます。

 嚥下障害への対応は、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリテーションスタッフなど様々な職種が関わります。
 言語聴覚士は言葉を話す機能や聴く機能のリハビリテーションを行いますが、嚥下障害など食べる機能の障害に対してもリハビリテーションを行います。

 嚥下障害に対するリハビリテーションは、一般的には「間接的嚥下訓練」と「直接的嚥下訓練」の2つに大別されます。
 まず、間接的嚥下訓練とは、食物を使わないで食べる機能に対して機能改善を図る方法です。具体的には口腔ケア、嚥下に関連する筋肉の筋力訓練などがあります。
 口腔ケアは口腔内を清潔に保つことで虫歯や口腔内の乾燥を予防するのみではなく、唾液の中の細菌の数を正常に保ち、誤嚥性肺炎の発症を低下させるとも言われています。嚥下に関連する筋肉の筋力訓練とは、嚥下も物を持ったり歩いたりすることと同様に筋肉によって行なわれているため、唇や舌、喉などを動かすための筋肉を強化する方法です。 
 次に、直接的嚥下訓練とは、実際の食物を使って食べる練習をすることで、食品の大きさや固さの調整や、食事中の姿勢の調整、食事をする時の注意点などを指導する方法です。
 食事中の姿勢については、基本的には軽くあごを引き、しっかりとまっすぐ座ることが重要ですが、重度の嚥下障害の方であれば30~60°程度背もたれを倒し、気管と食道の位置関係に配慮する方法や、顔や喉の左右どちらかに麻痺がある場合には、首や体を左右へひねったり倒したりする方法が有効です。
 食事中の工夫としては、食べやすいものと食べにくいものを交互に食べることで、口の中や喉の中に食物が残ってしまうことを防ぐ交互嚥下や、1口で何度も嚥下を行ないのどの残留を除去する複数回嚥下などがあります。

 今回は嚥下障害に対するリハビリテーションの一部をご紹介しましたが、その方の嚥下の能力を適切に評価し、それに基づいて適切な方法を選択することが重要です。
 嚥下障害でお困りの方は、専門的な医療機関での相談をおすすめします。


◎ 著者プロフィール
氏名:中平 真矢(ナカヒラ マヤ)
所属:高知大学医学部附属病院 リハビリテーション部
役職:言語聴覚士

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