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コラム -医療情報提供-

人生の最期について考えてみませんか?

 どんなに医学が進歩しても、死から逃れることはできません。ところが死について、きちんと考えていない方は少なくないようです。

 国の調査で、30歳以上の方の30%以上が「死についてほとんど考えたことがない」に「あてはまる」、「ややあてはまる」と回答しています。また、20歳以上の56%が「自身の死が近い場合の医療についての家族と全く話し合ったことがない」と回答しています。

 たとえば、認知症や脳血管障害などで体が不自由になり、食べ物が誤って気管に入り肺炎を起こす方がいます。そのままでは栄養不良で体力も落ち、ますます食べ物を飲み込みづらくなります。
 こんな時、医学的には「胃瘻」(お腹から胃にあけた穴)を造り、栄養剤を入れる方法があります。しかし、あくまでも医学的に可能というだけで、本当に「胃瘻」が本人のためか真剣に考えるべきです。本人の意思表示ができない場合、家族は大変難しい選択を迫られます。

 もしご自身が患者の立場だったら、どう考えますか?「食事もできないのに生かされるのは嫌だ」、「栄養失調で死ぬのは嫌だ」など考え方はそれぞれです。
 もし、家族の立場だったらどうでしょう?「胃瘻から栄養剤を入れている姿を見るのは辛い」と感じる方や、「どんな状態でも1分1秒でも長く生きて欲しい」と願う方もいます。

 国の調査では、自身の延命治療は55歳以上の5.1%しか望みませんが、家族の延命治療は14.7%が望んでいます。このずれは、「家族に迷惑をかけたくない」、「家族には長生きして欲しい」という思いやりからでしょう。

 こうしたずれの解消のためには、家族での話し合いが大切です。最近は、事前指示書、エンディングノートという自分の意思を書き記すものが普及しています。こうした書類は、いざという時の自身の尊厳を守り、家族の悩みを減らすことに役立ちます。
 死をマイナス思考ではなく、自身と家族の人生をどのように豊かにするか、というプラス思考で考えたいものです。


◎ 著者プロフィール
氏名:阿波谷 敏英(アワタニ トシヒデ)
所属:高知大学医学部 家庭医療学
役職:教授

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