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コラム -医療情報提供-

慢性腎臓病について

 慢性腎臓病(CKD)とは、長期に経過して腎臓が悪くなる病気をまとめたものです。よく腎臓病=不治の病、致命的な病気というイメージをもたれてしまいますが、正しく病気を理解すれば、病気の進行を遅らせることができます。

 腎臓は、左右に1つずつあり、形はそらまめ状で、大きさ的には成人の握り拳くらいとされます。
 腎臓は腹部大動脈という大血管から血液をうけとり、濾過(ろか)し尿を作ります。尿は体内で過剰になった水分、塩分、カリウムといったミネラル、尿毒素といった体内で不要になった老廃物を集めたものであり、腎臓の働きが低下すれば、全身がむくむ原因となります。さらに進行すると、全身がかゆい、食欲が無いといった尿毒症症状が出現します。
 尿毒症状態は生命にかかわる状態であり、こうなると透析療法が必要です。透析治療は週3回、各4時間~5時間と長時間が必要になるため、大幅に生活の質が低下することになります。

 このように、CKDが進行した状態を末期腎不全と言いますが、末期腎不全となり透析をうけている患者さんの数は毎年1万人弱のペースで増え、30万人の方が現在この治療を受けています。
 検診では、蛋白尿・eGFR に注目してCKDを見つけます。
 なぜ、尿の蛋白が重要なのでしょうか。それは、尿に蛋白がおりる量が多いほど腎臓病が進行するスピードが速く、透析が必要な状態に至る危険性が高まることがわかっているからです。

 有名な研究報告で、検診にて、尿蛋白が陰性(-)~±の方が、17年後透析になったのはほぼ0 %であったのに対し、3+の強陽性の方では実に6人に1人が透析に陥ったという報告があります。
 また、クレアチニンや、eGFRという項目が検診にあると思いますが、これは日本腎臓学会がeGFR 60未満をCKDとすると表記しているからです。eGFRとは日本語では推算糸球体濾過量と訳されます。これは、腎臓の中にある糸球体という装置がどれぐらい働いているかという意味になります。

 糸球体は毛細血管のかたまりで形成された装置で、片方の腎臓に100万個ずつ有り、血液から尿を生成する大元です。正確にはeGFRの単位はml/minですが、イメージとしてわかりやすいので私はよく%に置き換えて説明することが多いです。
 すなわち、eGFRが60 ml/minであれば、60%の糸球体が働いているという意味になります。この糸球体の稼働率が30%を切ると、徐々にむくみや腎臓性貧血といった腎臓病の症状が出現し、10%を切ると、末期腎不全となります。

 実は、慢性腎臓病の定義に当てはめると日本の成人人口の13%(1330万人)がCKDに相当することになるのです。ただ、そのCKDの患者さんのうち約1000万人は30-60%の間、すなわちCKDの3期といわれています。3期ではまず自覚症状もありませんが、進行予防策を行わないと静かに透析へ向かうことになります。

 治療ですが、CKDには、慢性腎炎という特殊な腎臓病、糖尿病による腎臓病、高血圧による腎臓病など、原因が異なる病気が混在するため、原因に応じた治療を行う必要があります。特に生活習慣病の治療は重要です。またCKDの食事療法として特殊なものに蛋白制限食があります。食事中の蛋白を減量する事で、蛋白尿が減少し、CKD進行を遷延できることが分かっています。

 以上、これらの話はCKDのほんの一部です。検診でCKDを指摘された際は、持病をお持ちの方はかかりつけ医の先生に相談いただくか、かかりつけ医をお持ちでない方は、専門医療機関の受診をお勧めいたします。


◎ 著者プロフィール
氏名:井上 紘輔(イノウエ コウスケ)
所属:高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科学
役職:助教

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