前のページに戻る

コラム -医療情報提供-

甲状腺の病気について

 甲状腺は喉仏の下、首の皮のすぐ奥にある蝶々が羽を広げたような形の、ホルモンを作る内分泌臓器です。甲状腺ホルモンは常に一定の量が血液の中に存在し、いわば人間にとって空気のような存在です。その役割はエネルギー代謝、分かりやすく言えば新陳代謝の調節です。
 我々が健康に生きるためには細胞の中のミトコンドリアで糖や脂肪を燃やしてエネルギーを作る必要があり、甲状腺ホルモンはその調節を行っています。

 甲状腺の病気には、ホルモンが多すぎる病気、少なすぎる病気、そして腫瘍があります。多すぎる病気の代表はバセドウ病です。甲状腺が腫れてホルモンを必要以上に分泌する結果、エネルギー代謝が亢進しすぎて暑がり、汗かきになったり、心臓が速く動きすぎて動悸を感じたり、脂肪が燃えすぎて、短期間に急激に体重が減ったりします。また手が細かく震えたり、一部の患者様では両目が前に飛び出たような症状が出ることもあります。

 ホルモンが少なくなる病気は甲状腺機能低下症、または橋本病とも呼ばれます。最初のうちは無症状ですが、病気が進行すると甲状腺ホルモン不足となるため、バセドウ病と逆の症状、すなわち新陳代謝が低下して寒がりになったり、体温の低下、身体がむくんで太る、などの症状がでるようになります。さらに進行しますと、脳の働きが低下してろれつが廻らなくなり、意識がなくなってしまうことさえあります。

 最後に腫瘍です。甲状腺は腫瘍の出やすい臓器で、健康人でもかなりの頻度でしこりが見つかります。幸い大部分は良性で、よほど大きくない限り、特に治療の必要はありません。万一悪性であっても、甲状腺がんの9割以上を占める乳頭癌は非常に進行が遅いことが知られています。

 バセドウ病や橋本病になるきっかけとして、よくヨードとの関連すなわち海草の食べすぎなどが言われています。しかしバセドウ病は、日本ではヨードの取りすぎで病気がおこることはありません。むしろストレスなどが発症のきっかけになることが多いようです。これに対して橋本病は、ヨードの取りすぎで症状が悪化することがあり、特に健康食品として出回っている根昆布などは注意が必要です。

 最後に、甲状腺の病気の診断や治療は、血液検査や超音波検査で行いますが、最終的な診断には、かなり専門的な知識が必要です。高知大学付属病院では、火曜日と木曜日に甲状腺専門外来を行っています。またインターネットで甲状腺学会のホームページを開きますと、高知県で診療を行っている甲状腺専門医がわかります。専門医の資格を持った先生を受診されることを、是非お勧めします。


◎ 著者プロフィール
氏名:岩﨑 泰正(イワサキ ヤスマサ)
所属:高知大学医学部 保健管理センター
役職:教授

「コラム -医療情報提供-」に戻る


診療科目一覧に戻る ページの最初に戻る