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コラム -医療情報提供-

なぜ口腔ケアが必要か

 口腔ケアというのは口の中の歯のまわりや舌の表面といった部分の汚れや細菌を取り除くことをいいますが、その目的は虫歯や歯周病を予防することやそれらの進行を遅らせるだけではありません。
 最近、虫歯や歯周病がさまざまな全身疾患と関係があることが分ってくるとともに、口腔ケアを積極的に行なうことによって虫歯や歯周病と関連のある全身疾患を予防したり、改善したりすることができることが明らかになってきました。つまり、口腔ケアの目的というのは、口の中の状態をよくすることによって全身の状態もよくしようということです。

 それでは、具体的にどのような疾患を予防・改善できるかをお話します。
 まずは、誤嚥(ごえん)性肺炎です。高齢の方は飲み込む力が弱く、のどの反射も弱いため、細菌を含む食べ物や唾液を誤って気管に入れてしまいがちです。免疫力が落ちている状態でそのようなことが起こると容易に肺炎(誤嚥性肺炎)を発症します。その予防策としては、「誤嚥を生じにくくする」ことも大切ですが、たとえ誤嚥しても誤嚥性肺炎に移行しないように口腔内の細菌数を減らしておくことが効果的です。

 次は、心臓の病気の1つである感染性心内膜炎です。心不全や心臓の人工弁置換術を受けた患者さんでは、血管の中の細菌が心臓の膜や人工の弁に付着して感染性心内膜炎を起すことがあります。
 この心内膜炎を起す細菌の約4割は口の中の細菌ですので、心臓の病気を持つ患者さんの場合、口の中の細菌が血管内に入り込まないように常に口の中を綺麗にしておくことが重要です。

 その他、動脈硬化、糖尿病、低体重児出産(早産)なども口の中の細菌や歯周病などの口の中の慢性的な炎症病巣で産生される炎症性サイトカインという物質と関連していることが知られており、口腔ケアを行うことによりこれらの病気を予防することができます。さらに、口の中の状態を綺麗にし、歯のない場合はきちっとした入れ歯を入れて、食べ物をしっかりと噛むことによって認知症の発症を予防したり、進行を遅らせることができます。

 このように、口腔ケアにより口の中の環境を整え、口から食べる機会を増やし、人との会話を楽しむことにより、全身疾患の予防だけではなく、生活の質(QOL)を向上させることも出来ます。


◎ 著者プロフィール
氏名:高橋 真由(タカハシ マユ)
所属:高知大学医学部 歯科口腔外科
役職:助教

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