前のページに戻る

コラム -医療情報提供-

悪性神経膠腫に対する免疫療法について

・悪性神経膠腫(こうしゅ)とは
 脳はニューロン(神経細胞)とグリア細胞(神経膠細胞)から形成されます。グリア細胞から発生する腫瘍を神経膠腫(グリオーマ)と総称します。この神経膠腫は原発性脳腫瘍の約25~30%を占めています。
 神経膠腫は、病理組織学的な悪性度と予後の組合せによって、良い方から悪い方へ WHO GradeI~GradeⅣ に分類されます。このうち、GradeⅢとⅣを合わせて悪性神経膠腫と総称します。
 神経膠腫のなかで悪性度の最も高い膠芽(こうが)腫に対する現在の標準治療は、手術、術後放射線・化学療法ですが、平均生存期間は14.6ヶ月、5年生存率は7.8% と予後不良です。これまで治療成績の十分な改善が認められず、新規治療の開発が期待されている状況です。

・悪性神経膠腫に対する免疫療法
 悪性神経膠腫に対する免疫療法は、有望な治療法として期待されています。悪性神経膠腫に高発現する腫瘍抗原(しゅようこうげん)が発見されて以降、ワクチン療法の臨床研究も盛んに行われるようになっております。
 高知大学医学部脳神経外科学教室では、本学で作成された新規WT1ペプチド(WT1-W10)を用いた悪性神経膠腫(初発・再発)に対する免疫療法の臨床試験を行っておりますので、ご紹介させて頂きます。
 WT1抗原は悪性神経膠腫などの腫瘍細胞に特異的に発現する腫瘍抗原です。WT1ペプチドを投与するとWT1抗原を発現する腫瘍細胞のみを標的とする免疫細胞が誘導されるので、安全性と高い治療効果が期待されます。また、細胞傷害活性を強化する目的で免疫賦活(ふかつ)剤として百日咳ワクチンを合わせて投与します。

・WT1-W10ワクチン
 本学では、新たなWT1ペプチドワクチンを作成しました。このWT1-W10ワクチンは水溶性が高く、アジュバントとして百日咳菌不活化ワクチンを加えることが可能となり、高いCTL活性を得ることができるようになりました。投与後速やかに処理されるため、頻回投与が必要であり、徐放性を高めることが課題ですが、従来のワクチン療法よりも丘疹(きゅうしん)や硬結などが軽微です。
 当教室では、本学で作成された新規WT1ワクチン(WT1-W10ワクチン)を用いた多施設共同臨床試験を、2009年3月から開始しました。摘出した組織標本のWT1抗原が陽性であり、HLA型が合致すれば、20歳から80歳までの高齢者も対象としております。WT1-W10ペプチドと、免疫賦活剤である百日咳不活化全菌体ワクチンを1週間おきに皮内投与し、神経症状と頭部MRIでの評価を行っています。
 現在のところ、化学療法と併用しても重篤な副作用の発生はなく、安全に施行できる治療と考えられます。ただし、まだ始まったばかりの治療ですので有効性を証明するにはさらに研究が必要です。


◎ 著者プロフィール
氏名:川西 裕(カワニシ ユウ)
所属:高知大学医学部 脳神経外科
役職:助教

「コラム -医療情報提供-」に戻る


診療科目一覧に戻る ページの最初に戻る