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コラム -医療情報提供-

メタボリックシンドロームと脂肪肝(NAFLDやNASHについて)

 近年、メタボリックシンドロームとされる、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病率は増加の一途であり、世界中で重要な社会的問題となっています。
 日本でも、食生活の欧米化や肥満人口の増加に伴い、メタボリックシンドロームや脂肪肝を指摘される方が増加しています。

 日本では、2005年にメタボリックシンドロームの診断基準基準が規定され、それによると、ウエスト周囲径が、男性では85cm以上、女性では90cm以上を認め、さらに、脂質異常症、高血圧症、空腹時高血糖のうち2項目以上が該当する方が該当するとされています。

 生活習慣や遺伝的要因、環境的要因により発症した肥満を始まりとし、インスリン抵抗性が出現します。さらに、その状態が持続、進行すると、高血糖、高血圧、脂質異常症が出現し、メタボリックシンドロームが完成します。その一連の流れをメタボリックドミノと表現します。
 肝臓においては、脂質異常や高血糖、インスリン抵抗性や飲酒に伴い肝細胞内に中性脂肪の貯留を来たした脂肪肝が出現してきます。
 このように、メタボリック症候群の肝臓での表現型が脂肪肝やその関連する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)とされています。

 明らかな飲酒歴が無いにもかかわらず肝臓の脂肪化を特徴とする慢性の肝機能障害をNAFLDといいます。
 このうち、病態の進行しない例を非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver)と呼び、肝細胞そのものの変性や肝臓内への炎症細胞の出現、肝臓の線維化を来たす、病態の進行する例を非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis)と呼びます。

 高知大学及び佐賀大学、広島大学とその関連施設で健診を受診された方で、腹部エコーを施行した飲酒者を含む約8000人において検討を行ったところ、脂肪肝の方が全体で32.7%も存在していました。そのうち男性では約40%、女性では約15%に脂肪肝を認めました。
 一方、肥満の方について検討すると、男性ではBMI25以上や腹囲85cm以上が脂肪肝発症のリスクとなっており、女性では非飲酒者でのみ脂肪肝のリスクとなっています。

 現実には、精密検査を受けられていないだけで、このように数多くの方が脂肪肝を合併しております。アルコールを飲まない方でも脂肪肝が存在し、近年、このような方が増加してきています。2011年の厚生労働省のNASH班会議の報告ではNAFLDは約1000万人、NASHは200万人と推定されています。

 NAFLD、NASH患者では、十分な対応がとられないと、肝硬変、肝癌の出現の報告があります。現在、NASHから肝硬変への進行が10年で10-20%といわれており、さらにNASHの肝硬変からは5年間での発癌率が約11%との報告があります。
 日本国内での全肝細胞癌のうち約25%に及ぶ1万人が非ウイルス性とされており、そのうち多くの方がNASHに関連していると推定されています。

 メタボリックシンドロームや体重増加を伴う患者ではNAFLDの発症率が1年で10%以上との推定もありますが、一方でNAFLD患者では体重を7%減量することで肝臓内の組織の状態が改善するとの報告もあります。

 このように、日頃のアルコール摂取量の有無にかかわらず、健診で指摘された肝機能障害であっても、できるだけ早期に消化器、肝臓疾患の専門の医師の受診をお勧めいたします。


◎ 著者プロフィール
氏名:宗景 玄祐(ムネカゲ ケンスケ)
所属:高知大学医学部附属病院 消化器内科
役職:医員

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