前のページに戻る

コラム -医療情報提供-

南海トラフ地震に備える:
高知県災害時医療救護計画の改定と災害医療医師研修制度について

 高知県は、南海トラフ地震を含めた災害時の医療救護活動を「高知県災害時医療救護計画」として定めていますが、マグニチュード9クラスという最大規模の南海トラフ地震(L2)の想定を受け、2015年3月に計画が改訂されました。

 L2の被害想定は、全国の死者最大32万人(内閣府、2012年8月)、県独自の想定では県内の死者最大42000人、負傷者最大36000人(高知県、2013年5月)とされました。この36000人という負傷者数は県内の年間救急搬送患者数に匹敵し、医療対応の困難性は明らかです。
 本年2月に県が公表した新たな被害想定でも、津波避難空間整備率の改善(26%⇒94%)と津波早期避難意識の高まり(20%⇒70%)によって死者数は最大14000人に減りましたが、住宅耐震化率が微増(74%⇒77%)であるため、負傷者数は最大31000人とあまり減りませんでした。つまり、県内全域で膨大な負傷者が同時に発生する状況は変わっていないということです。
 さらに、震災直後には交通網が寸断されて負傷者の搬送が困難な時期が必ずあるという点も考慮されました。

 改定では、対応策として「医療の前方展開」と「県民あげての総力戦」を打ち出しました。

 医療の前方展開とは、負傷者の「後方搬送」が困難な時期は負傷者に近い場所(中小の病院や診療所など)での医療救護活動が重要になる、そこを強化する必要がある、という意味です。
 そのためには、「地域の医療施設や医療従事者、住民も参加した総力戦」の体制を作る必要があるとしました。

 具体策の一つが、今年秋から始まる「災害医療に関する医師研修制度」です。高知県と郡市医師会が中心となって行い、トリアージや応急処置、高度な救命処置などを学ぶものです。そのほか、県内8か所の総合防災拠点や医療救護施設などにおける資器材の整備や、検診バスを災害時に活用できるような取り組みも始まっています。
 また、災害医療コーディネータ(Co)や災害薬事Coに加えて、災害透析Coや災害看護Coといった種々の具体的な役割を持った災害医療リーダーも、新たに委嘱されました。

 一方、住民の方には、まず第一にけがをしないことが重要であり、けがをしなければ助ける側に回る、という意識を持っていただくこともお願いしたいと思います。


◎ 著者プロフィール
氏名:長野 修(ナガノ オサム)
所属:高知大学医学部災害・救急医療学講座
役職:教授

「コラム -医療情報提供-」に戻る


診療科目一覧に戻る ページの最初に戻る