前のページに戻る

コラム -医療情報提供-

認知症と自動車運転

 「認知症」とは病気の一つです。色々な原因で脳の神経細胞が傷つけられ、記憶・判断力の障害などが起こり、意識障害はないものの社会生活や対人関係に支障が出ている状態をいいます。65歳以上の高齢者では、平成24年度の時点で、7人に1人程度の方が認知症を患っていると考えられています。

 日本の65歳以上の免許保有者数は、平成23年度の時点で1300万人を超えています。この中で、7人に1人程度は認知症にかかっている可能性が高いことを考えると、認知症ドライバーは30万人近く存在することになります。

 一方で、近年、交通事故における加害者として高齢者の割合が増加しており、認知症ドライバーの運転が社会問題となっています。私たちの普段の診療でも、運転免許を持つ認知症患者さんに遭遇することは、決して珍しいことではありません。
 最近の調査では、(調査の時点で)運転を継続している人は全体の11%(832人)で、運転している認知症患者の6人に1人が交通事故を起こしていることが分かりました。また、事故を起こした患者さんのおよそ半数は75歳未満であり、その中の7%が人身事故であるという事実も明らかになりました。

 そこで、平成26年6月1日、医師が患者さんを認知症と診断した場合、任意で公安委員会に通報できる仕組みが導入されました。この時、医師が通報できる疾患の対象は、多くの方から「てんかん」だろうと思われていましたが、実は、てんかん以外に「認知症」も含まれていました。同時に、糖尿病や、ペースメーカーを挿入した、心臓に疾患のある患者さん、その他にも睡眠時無呼吸症候群などの、「自動車運転の認知・予測・判断・操作に支障をきたす病気をもつ」ドライバーの方について、公的に免許の停止を行うことができるようになりました。
 しかしながら、認知症患者さんは、主治医が運転中断を勧告しても、生活や通院を理由になかなか中断には踏み切れないという実態があります。また、その背景には、認知症高齢者のおかれている社会心理的背景が大きく影響していると考えられています。

例えば、運転中断を勧告しても、認知症患者本人が運転をしなければ病院にすら通院できない、高齢の妻は免許がなく、生活必需品の購入にも運転が不可欠であるため中断を拒否する…というケースが非常に多く見られました。
 この問題は、移動手段をほぼ車に依存している高知県では非常に重要な問題です。そのため、今後、高知大学基幹型認知症疾患医療センターなどが中心となり、患者さんへの対応についていっそうの努力が必要だろうと感じています。


◎ 著者プロフィール
氏名:上村 直人(カミムラ ナオト)
所属:高知大学医学部 精神科
役職:講師

「コラム -医療情報提供-」に戻る


診療科目一覧に戻る ページの最初に戻る