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コラム -医療情報提供-

においの障害と治療

 1.においの感覚(嗅覚)の特徴
 嗅覚は、鼻の中の天井に当たる部分にある「嗅上皮」の嗅細胞に空気中にプカプカ浮いているにおい分子が結合することによって感覚が生じます。においを嗅ぐときには鼻の前の方から空気を送り込みますが、私たちが何かを食べるとき、食べ物から発せられたにおい分子はのどの後ろから鼻へ入ってきて、味とともにそれらを味わいます。このように嗅覚は食べることに深く関わっています。
 嗅覚は他の感覚に比べ順応(慣れ)がとても早く起こります。同じにおいを嗅ぎ続けているとすぐに分からなくなることはよく経験されることでしょう。

 2.嗅覚に関わる疾患
 においが分からなくなる「嗅覚低下」の原因はさまざまですが、三大原因は次の通りです。
 まず一つ目は「呼吸性」です。これは副鼻腔炎(ちくのう)などにより鼻が詰まっているためににおい分子がうまく鼻に入らない状態です。徐々に進行するので気づかないこともあります。過去の報告によると5年以上放置すると治りにくいので気がついたら早く耳鼻咽喉科を受診し、原因となる鼻の病気の治療を受けることをお勧めします。
 二つ目は「感冒罹患後」で、風邪を引いて治ったあとに全くにおいが分からないことに気づくものです。これは風邪のウイルスが鼻から入って、嗅細胞を破壊するためと考えられています。嗅細胞は神経細胞の中でも再生能が非常に高く2〜3ヶ月で新しい嗅細胞ができてくると次第に回復してきます。しかし50歳以上で、また鼻の中に炎症を合併していると治りにくいので、早めに治療することが重要です。
 最後は「外傷性」で頭の大けがをしたあと、特に脳の中でも嗅覚情報処理に関わる前の方が傷害を受けたときに起こるものです。これまでは非常に治りにくいと考えられて来ましたが、早期から治療を開始すれば3割程度は改善が見られることが明らかになっています。

 3.嗅覚研究の新たな側面
 化学コミュニケーションと言って体臭が知らないうちに相手に何らかの変化を誘導することが知られています。最も有名なものは「寄宿舎効果」で、若い女性が集団生活をしていると知らないうちにお互いの体臭に影響され、月経の周期が同期してくる現象があります。また、最近ではパーキンソン病の患者さんで、嗅覚機能と認知機能との深い関係について報告されました。今後も多くの研究が「嗅覚のナゾ」を解明していくと期待されます。


◎ 著者プロフィール
氏名:奥谷 文乃(オクタニ フミノ)
所属:高知大学医学部 生理学
役職:准教授

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