前のページに戻る

コラム -医療情報提供-

脳卒中にならないために

 脳卒中とは、脳の血管の障害により症状が突然に引き起こされるもので、「脳梗塞(のうこうそく)」「脳内出血」「クモ膜下出血」をまとめた言葉です。脳卒中は日本人の死因の第4位であり、依然として上位を占めます。現在でも、年間約12万人が脳卒中で死亡しています。
 厚生労働省によると、2010年には約29万人が脳卒中を発症し、要介護者となる患者さんの数は約185万人と推計されています。人口の高齢化とともに脳卒中の患者数はさらに増え続け、ピーク時には330万人に迫ると予想されます。

 脳卒中の中でも、1960年には脳出血が3/4を占めましたが,近年、その割合は著しく減少しました。代わって脳梗塞が増え、2010年には約60%を占めています。
 「脳梗塞」にはラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓(そくせん)症の3つの病型があり、一過性脳虚血発作は脳梗塞の前兆です。

 脳卒中が増加している理由として、生活習慣の変化による糖尿病や脂質異常症の増加が考えられます。 都道府県別に脳卒中による死亡率をみると、男女とも東北地方や北関東地方で高く、西日本で低い傾向が認められます。全国平均でみると、男性の死亡率は女性の約1.8倍です。
 脳卒中は、介護が必要となる原因の第1位です。要介護度が高くなるほど脳卒中の割合が増加し、寝たきりを含む重い介護を要する原因の約3割を占めます。
 また、脳卒中の入院期間はがんや他の循環器疾患に比べて長く、男性で2ヵ月半、女性では4ヵ月近くに及びます。特に高齢者に多く、重症度が高かったり、女性の場合は介護者が身近にいないことが多いため、入院期間が長くなっています。
 そのため、脳卒中の国民医療費は全体で約1兆7千億円に上り、そのうち70歳以上で約1兆円を占めているのです。このように患者さんの社会的負担の面からも、脳卒中の予防と治療は重大な課題です。

 脳卒中にならないために、まずポイントとなるのが「高血圧の予防」です。高血圧有病率は年齢とともに上昇し、60代になると6割以上が高血圧です。高血圧人口は約4千万人と推計され、今なおわが国の国民病といえます。
 血圧上昇に伴って、男女とも脳卒中による死亡リスクは高まります。食塩の過剰摂取は高血圧を引き起こします。脳卒中予防のために減塩は重要です。
 また、脳卒中になったことがあるひとの場合は、再発を予防するために高血圧のコントロールはきわめて重要です。

 脳卒中の発症と血圧との間には、直線的な関係があり、どの年代でも血圧が高いほど脳卒中発症リスクは高まります。
また、若い世代ほど強い関連性がみられます。すなわち、若年者ほど脳卒中予防のために厳格な血圧管理が求められます。

 他にも、「脂質異常症」、つまりコレステロールが問題になります。
 日本人のコレステロール値は食生活の変化により1980~90年にかけて急激に上昇し、2000年には平均200mg/dLを超えています。それに対してアメリカでは徐々に低下し、現在は日本人がアメリカ人のコレステロール値を超えています。
 日本人の総エネルギー摂取量はこの50年であまり変わりませんが、栄養素の割合は大きく変化しました。摂取エネルギーに占める糖質の割合は80%から60%弱に減少し、代わりに脂質の割合が9%から26%に約3倍に増加しました。脂質の割合が20%を超えたのは,アメリカからファーストフードのチェーン店が進出した時期と重なります。 平成22年の国民健康・栄養調査によると、成人男性の20%、女性の28%で、脂質からのエネルギー摂取が30%以上でした。特に若年者で脂質過多の傾向が強くみられます。このような脂質の取りすぎは、脳卒中の発症リスクを高めることになります。

     

 加えて、喫煙も脳卒中の原因となることがあります。
 禁煙に成功しても、残念ながら再び喫煙してしまうことが少なくありません。自力の場合は90%、禁煙外来を介しても40~70%は再喫煙してしまうといわれています。禁煙を達成した後も、繰り返し声をかけ、褒めることが大切です。
 平成24年の診療報酬改定において、生活習慣病、小児、呼吸器疾患患者等に対する入院基本料等加算および医学管理等を算定する場合には、「原則屋内全面禁煙」を行うよう要件が見直されました。受動喫煙リスクが明らかになり、より厳しく、公共の場である病院内での禁煙が求められるようになっています。脳卒中を防ぐためには、禁煙を続けることも重要になってきます。

生活習慣に気を配り、運動や肥満にも気をつけることで高血圧を予防し、脳卒中にならないようにしてほしいと思います。


◎ 著者プロフィール
氏名:上羽 哲也(ウエバ テツヤ)
所属:高知大学医学部 脳神経外科
役職:教授

「コラム -医療情報提供-」に戻る


診療科目一覧に戻る ページの最初に戻る