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コラム -医療情報提供-

耐性菌の話

 地球上には非常に沢山の微生物(ウイルス、細菌、真菌、原虫など)が存在し、病原微生物もいれば、無害・有益なものもいます。感染症治療ではその原因微生物を殺すために適切な薬剤を使用しますが、その薬剤が効かず、耐性化したものを薬剤耐性微生物といい、それが細菌(真菌を含む)ならば薬剤耐性菌(耐性菌)と呼びます。
 薬剤耐性菌のほか、薬剤耐性ウイルス・真菌・原虫も存在します。

 感染症の原因が耐性菌でも、多数の抗菌薬から効果的な薬剤を探し出し治療を行ないます。しかし現在、さらにこれらの薬剤に対しても耐性化した細菌が出現し問題となっています。
 こういった複数の薬剤に耐性化したものを多剤耐性菌と呼びます。多剤耐性菌に対する殺菌効果の期待できる薬剤は激減し、最悪全く適応薬剤のない場合もあります。
 このような現状を踏まえて、国は感染症法に基づく耐性菌出現動向を監視しており、指定された重要な耐性菌については医療機関の届出が義務付けられています。

 たとえば、2014年9月19日にはカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が追加指定されました。カルバペネムは細菌感染症の治療薬として「切り札」的に使用されている非常に高い殺菌効果のある抗菌薬です。
 このカルバペネムに耐性化した腸内細菌科細菌がCREです。CREは高度に薬剤耐性化し、治療困難で高い死亡率が報告されています。CRE感染症患者数は日本を含む世界中で増加し、主なCRE感染症は敗血症、髄膜炎、尿路感染症や呼吸器感染症です。

 人の腸管に定着している腸内細菌(大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクターなど)がカルバペネムに耐性を持つとCREになります。健康な人でも、腸管内にCREを保有しているケースも既に報告されています。
 しかし、その人が健康で、CREが腸管内にいる限りは基本的に問題ありません。問題は、免疫力低下や他の病気が引き金となりCRE感染症が発症することや、他の人(入院患者など)に感染が拡大することです。
 感染はCREに汚染されたモノや人の手などを介して拡大しますので、その点を考慮した対応・対策が必要です。基本的には手洗いや消毒の徹底で感染は予防できます。
 CREの中には生活環境で生存可能なものもいますから、日常生活での整理整頓や清掃・消毒なども必要です。過度な不安を抱くことなく正しい知識を持ち、十分な体力維持に心がけて過ごすことが大切です。


◎ 著者プロフィール
氏名:竹内 啓晃(タケウチ ヒロアキ)
所属:高知大学医学部附属病院 検査部
役職:講師

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