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コラム -医療情報提供-

腰椎椎間板ヘルニア

 背骨は椎骨とよばれる24個の骨が、椎間板という伸縮可能な組織でつなぎ合わされています。椎間板は2重構造になっていて、線維が樹木の年輪のような形にぎっしり詰まった組織(線維輪)がゼラチン状の組織(髄核)を包み込んでいます。

 ヘルニアという医学用語は、一般に、体内の臓器や組織が、本来あるべき部位からはみ出してくる状態をいいます。「腰椎椎間板ヘルニア」は、重量物を不用意に持ちあげた時などに、腰椎(背骨の腰の部分)の椎間板内圧が高まり、線維輪に亀裂が生じて中の髄核が脱出した状態です。脱出した髄核それ自体も「ヘルニア」と呼びます。

 ヘルニアは、しばしば腰椎の中にある腰やお尻や足へ行く神経を圧迫するので腰痛やお尻や太もも、足などに痛みやしびれを来します。多くは片方ですが、髄核の脱出量が多いと両側の足の症状や膀胱へ行く神経も圧迫して排尿障害(尿がスムースに出ないとか尿漏れ)をきたします。

 ヘルニアの位置や大きさを診断するためにMRI検査を行いますが、このとき注意が必要なのは、治療する必要のない無症候性のヘルニア(症状と関係のない椎間板の膨隆や小さなヘルニア)が偶然見つかることが少なくないことです。従って、診断をMRI検査だけに頼るべきではありません。専門医のアドバイスを受けて下さい。

 治療法として、痛みは強いが麻痺が強くない症例では、まず、鎮痛剤や注射によるブロック療法が選択されます。脱出した髄核は自然に縮小する(退縮)可能性があるからです。大きなヘルニアほど退縮しやすいこと、その半数は3ヶ月以内に退縮が起こると推定されています。
 しかし、足の麻痺が強い場合や排尿障害がある場合には、ヘルニアの退縮を待たずに手術します。たとえヘルニアが退縮しても麻痺や排尿障害が回復せずに残るからです。鎮痛剤やブロック療法で痛みが十分とれない症例や、仕事など患者さんの都合でヘルニアの退縮を待てない場合も手術の対象になります。

 手術の目標は、顕微鏡を用いた神経に対して安全な操作で、確実にヘルニアを取り除くことです。内視鏡(または顕微鏡)を用いて小さな皮膚切開で行う手術が普及しつつあります。しかし、移動したヘルニアや巨大ヘルニアでは、小さな皮膚切開にこだわると安全性と確実性が損なわれます。
 脊椎脊髄外科手術指導医や内視鏡手術認定医に相談して、その医師が得意とする方法で、安全で確実な手術を受けて下さい。


◎ 著者プロフィール
氏名:谷 俊一(タニ トシカズ)
所属:高知大学医学部 整形外科
役職:教授

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