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コラム -医療情報提供-

在宅医療を受けるには

・在宅医療とは
 医学がどんなに進歩しても治らない病気があります。たとえば癌などは、現代医学でも早期に発見されれば、治ることが多くなりましたが、残念ながら治せないほど進行してしまっている場合もあります。また、脳卒中や怪我で、脳や神経に障害を負ってしまった場合、後遺症として体の麻痺などが残ることがあります。
 このような状態では、大学病院とか救急病院のような急性期病院で療養を続けることは難しくなります。こうした方には、症状の緩和とか日常生活の支援といったその方の生活の質(Quality of Life)を重視したケアをすべきなのですが、治す医療が中心の急性期病院はそのための施設ではないからなのです。たとえば、癌の症状の緩和であればホスピス(緩和ケア病棟ともいいます)が適切でしょうし、手術など急性期の治療のあとの長期リハビリが必要な状況であれば回復期病床や療養病床が適切でしょう。さらに、より、その人らしい生活をということであれば自宅で療養するという選択肢もあります。こうしたことを支えるのが在宅医療です。在宅医療では、医師による訪問診療や、看護師による訪問看護、理学療法士による訪問リハビリ、薬剤師さんによる訪問指導、ヘルパーさんの訪問介護など、いろんな職種がチームになって、ご本人の療養を支えます。

・ご自宅で最期を迎えること
 長期で療養が必要であれば住み慣れた環境に居たい、最期は自宅で迎えたいと願うのは自然なことです。平成24年度におこなわれた総務省の高齢者の健康に関する意識調査では、「もし治らない病気になった場合、最期はどこで迎えたいですか?」という質問に、病院など医療施設と答えた方が27%であったのに対して、54%の方がご自宅での療養を希望されていました。しかし、現在、日本人の80%が病院で最期を迎えられていまして、ご自宅で亡くなる方は12%ほどにとどまっています。過去には自宅で亡くなる方が80%を超えていたのですが、医療の発達とともに病院で亡くなることが多くなり、昭和50年ごろを境に病院で亡くなる方が多くなってきました。
 しかし、どこで亡くなるのかが大切なのではなく、ご本人、ご家族が満足できる、その人らしい人生を終えたかどうかが大切だと思います。もちろん、病院や福祉施設でもその人のお気持ちの尊重したケアをおこなっているわけですが、先ほど述べたように、自宅で最期を迎えたいと考える方が多いのは、その人らしい生活をかなえ易いからだと思います。

・いつ、誰に相談したらいい?
 たとえば、もともと持病があってかかりつけの医師がいて、通院が困難になってきた場合は、ぜひ、その医師にご相談ください。町中の開業医さんでは、ご自身で訪問診療をおこなっている先生もおいでます。また、介護保険の認定を受けている方は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーさんに相談すると訪問看護や訪問リハビリ、デイサービスなど必要な介護保険のサービスを調整してプランを立ててくれます。介護保険の認定を受けていない、対象になるのかわからない、どこにケアマネジャーさんがいるのかわからない、といった方は、すべての市町村にある地域包括支援センターなどで相談に乗っていただけます。
 比較的大きな病院では、その医師自らが訪問診療に行っていないことが多いようです。こうした場合は、訪問診療をおこなっている在宅療養支援診療所などと連携をとってくれます。病院内にある医療相談室などの窓口で相談してみるのがよいでしょう。こうした窓口には、医療ソーシャルワーカーという職種の方がおいでて、訪問診療をおこなっている医療機関を紹介してくれたり、介護保険制度をはじめいろいろな福祉制度の紹介や調整をしてくれたりします。
 入院中の方では、退院前に在宅療養を支えるいろいろな職種の担当者が集まって退院前ケアカンファレンスというものをおこなうこともあります。これには、患者さんご本人やご家族も参加することができます。こうした場を準備するのも医療ソーシャルワーカーの仕事となります。病気のこと、日常生活のこと、経済的なことなど気軽に相談してみてください。

・超高齢社会に向けて
 みなさんよくご承知のように、日本は急速に高齢化が進んでいます。現在、いわゆる団塊の世代の方々が65歳以上の高齢者になりつつあります。10年後には75歳以上の後期高齢者になるわけで、社会保障の充実がとても大切になります。厚生労働省は、2025年を目途に、増加する高齢者を支えるには、病院中心の治す医療ではなく地域で支える保健、医療、福祉を包括した支援・サービス提供体制を整備していこうとしています。これを地域包括ケアシステムと呼んでいます。入院するための病床を増やすのではなく、介護施設などの福祉サービス、在宅医療を充実させていく方針です。高齢者が増えていくということは、亡くなる方も増えていくことになります。在宅医療はますます重要になってくると思われます。


◎ 著者プロフィール
氏名:阿波谷 敏英(アワタニ トシヒデ)
所属:高知大学医学部 家庭医療学(寄附講座)
役職:教授

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