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よろず相談

63.少量の酒で酔い、攻撃的になる(平成27年12月11日掲載)

質問
 知人の女性が酔うと別人のように怒りっぽくなり、言動が恐ろしくなります。怒る原因は不明で、作り話のような恨み節を言うことや、子どものように泣きわめくことも。実際に飲む量は日本酒1合程度。朝から酔っていることもあり、アルコール依存症を疑ったのですが、注意すると反発するので医師に診てもらうこともできず、対処のしようがありません。このままだとどうなるのか心配です。(匿名)

回答

 相談内容を拝見すると、この方は20代の頃からアルコールをたしなまれており、少量でも別人のようになるということから、相談者の方が心配するようにアルコールの影響で人付き合いがうまくできなかったり、周囲が誤解をしたりしているのではないかと思われます。

 アルコールの問題は、本人を含め周囲の方もなかなか病気と思わない、もしくは思いたくないという気持ちから、病気の治療導入に結びつかないことがあり得ます。

 アルコール依存症について簡単に説明をすると、飲酒に関するコントロールが失われることと、体からアルコールが抜けると、離脱症状(心身の不快な症状)が出ることが特徴と言われます。
 したがって、誰もがなり得る病気ですが、一方で大変誤解の多い病気でもあります。意志が弱いから、だらしがないから、怒りっぽかったり暴力を振るったりするから依存症だと思われている場合も多々あります。

 アルコール依存症は病気ですが、アルコールを飲むこと自体の問題よりも、自分自身でアルコールとの付き合い方のコントロールを失い、社会的な生活に支障を来している状態を指します。そして依存症の本人も必死に闘っています。
 この方の場合は朝から飲酒が見られていることと、作り話なども見られているとすれば、これからアルコールに関連した認知症も起こり得ます。女性だからなりにくい、ということは決してありません。むしろ、女性の方が、アルコールに関連した認知症になりやすいという調査結果もあります。

 この方の場合、既にアルコール依存症を引き起こしているか、またさらに認知症のような不可逆な病気になっているか、はっきりしたことは言えません。ですが、大切なのはアルコールの問題を抱えている人自身は治りたい、何とかしたいと思っても自分で行動を変えることが難しいということです。
 家族や友人関係、職場の人までも巻き込む場合があるため、周囲の理解や支援が非常に大切です。周囲の「やめなさい」「気の持ちよう」といったアドバイスについつい反発したり、傷ついたりしてさらに飲酒が止まらなくなる場合もあり得ます。

 周囲にいる方は正しい接し方や治療方法を、専門書などを通じて知ることをお勧めします。
 周囲の人ができることはまず、病気としてのアルコール依存症に関する正しい知識を持つことと、アルコールに関係なく本人を孤独にさせない、見放さないというメッセージをアルコール依存症の方に送ることです。


◎ 著者プロフィール
氏名:上村 直人(カミムラ ナオト)
所属:高知大学医学部 精神科
役職:講師

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