前のページに戻る

よろず相談

73.バセドー病でも海藻類食べたい(平成28年5月27日掲載)

質問
 60年以上前に甲状腺機能亢進症(バセドー病)と診断され、今も年2回、血液検査を受けています。海藻類を食べたら駄目とのことで、ヒジキはもう何十年も食べたことがありません。みそ汁などの具のワカメは箸で取り出し、食べないようにしています。うどんなどのつゆには昆布だしが使われていることが多く、テレビで飲まないように言っていました。高齢になり、お迎えも近付いておりますので、海藻類の佃煮やらも食べてみたいのですが…。(88歳女性)

回答

 甲状腺疾患における海藻摂取の是非は患者さんからよく質問を受けます。海藻に含まれるヨウ素(ヨード)と甲状腺との不思議な関係について解説させていただきます。

 甲状腺ホルモンが合成される際にはヨウ素が材料として必要です。
 ヨウ素は海藻や魚介類などに豊富に含まれており、日本で生活していればヨウ素が不足することはありません。しかし海から遠く離れた場所では食材に含まれるヨウ素が少ないため、海外ではヨウ素摂取不足により甲状腺機能低下症を引き起こす地域もあります。

 逆に、ヨウ素を多量に摂取する習慣を続けた場合も、甲状腺機能低下症が起こることがあります。これはヨウ素を過剰摂取することにより、甲状腺へのヨウ素取り込みがうまくできなくなることが原因です。

 この現象を利用して、甲状腺機能亢進症を引き起こすバセドー病の治療としてヨウ素が使用されることがあります。バセドー病の患者さんに多量のヨウ素を投与すると、やはり甲状腺におけるヨウ素利用が不十分となり、甲状腺機能を改善させることができるのです。

 では、バセドー病の患者さんに海藻類を制限する意義はあるのでしょうか。
 ヨウ素の摂取を制限しないと、バセドー病の薬(抗甲状腺薬)が効きにくかったり、バセドー病が再発しやすくなったりするのではないか、という意見もあります。しかし、これらの意見の真偽は不明であり、バセドー病の治療としてヨウ素制限が有効という科学的な証拠はありません。

 特にわが国では多くの食材にヨウ素が含まれているので、食事制限により対処するのは現実的ではなく、甲状腺機能に応じて抗甲状腺薬の処方を調整する方が理にかなっていると言えます。

 バセドー病の治療としてヨウ素制限は科学的根拠に乏しく、節度を持って海藻類を摂取するのは問題ないと考えられます。ただし質問者の場合、ヨウ素制限を行う何か特別な理由があるかもしれませんので、主治医の先生にご確認ください。


◎ 著者プロフィール
氏名:西山 充(ニシヤマ ミツル)
所属:高知大学医学部 内科(内分泌代謝・腎臓)
役職:准教授

「よろず相談」に戻る


診療科目一覧に戻る ページの最初に戻る