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よろず相談

74.体が緊張して、いつも汗をかく(平成28年6月10日掲載)

質問
 幼い頃から、体がいつも緊張していて、手のひら、足の裏、脇の下にいつも汗をかいている状態です。特に冬場は汗冷えがして、一日中、氷水に漬かっているような時もあります。お酒を飲む機会が増える時期、宴席などで握手を求められた際には笑ってお断りするしかなく、ストレスがたまります。何かいい治療法はないでしょうか?(53歳女性)

回答

 精神的に緊張した時に手のひらや脇の下に汗をかく症状は多汗症と呼ばれます。体質的に緊張時に手のひらや足底、脇の下、顔面に汗をかきやすい状態を指します。類似の症状を引き起こす疾患として、更年期障害や自律神経障害によるホットフラッシュや甲状腺機能亢進症などの疾患が隠れている場合もあります。

 多汗症では、手のひらは幼少期から、脇の下は思春期に、顔面は成人してから症状が強くなります。病気ではありませんが、手のひらに汗をかくことで字を書くと紙がぬれる、道具を持つ手が滑る、恥ずかしくて他人と握手ができない等、社会生活を営んでいく上でお困りの方には治療をおすすめします。

 制汗作用のある塩化アルミニウムを手のひらに塗る外用療法や、脇の下に汗が多い場合は脇の下の皮膚にA型ボツリヌス菌毒素製剤をごく少量注射する方法、イオンフォレーシスと呼ばれる手を水に浸し微弱電流を流すことで汗腺細胞の働きを弱める治療、飲み薬による全身治療も試みられます。

 これらの治療の効果が乏しい場合には、手術治療をおすすめします。全身麻酔で眠っている間に、脇の下の皮膚のシワに沿った1センチ程度の傷から棒状のカメラを胸に挿入して、手のひらの汗を調節する部分の交感神経幹を一部焼灼し働きを弱めます。治療効果はほぼ100%で、手術前には冷たくて濡れていた手が手術後には温かく乾いた手に変わります。手術は30分から1時間で終了し翌日には退院が可能です。多くの施設では左右それぞれ2カ所の創から手術を行いますが、高知大学医学部附属病院では手技を工夫し、左右1カ所ずつの創で治療します。治療後には代償性発汗と呼ばれるお腹や背中、足底にかく汗が増加する現象が起こります。ごくまれな合併症としてはホルネル症候群と呼ばれる瞼が下がる合併症の報告もありますが、最近ではこれを発症しにくい手術手法が提唱されており、心配は少なくなりました。この治療は保険適応です。

 多汗症は病気ではありませんが社会生活を営む上で深刻に悩んでおられる方はたくさんいらっしゃいます。まずは皮膚科を受診され、多汗症と診断された場合には、さまざまな治療法があることを知っていただければ幸いです。


◎ 著者プロフィール
氏名:穴山 貴嗣(アナヤマ タカシ)
所属:高知大学医学部 外科(ニ)
役職:講師

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