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よろず相談

82.誤嚥の予防法は(平成28年10月14日掲載)

質問
 このごろ、食事の終わり近くになると、食べ物の切れ端が喉の奥の方に絡みます。咳やくしゃみが止まらず、急いでうがいをしています。診察は受けたことがありませんが、誤嚥性肺炎で亡くなることがあると聞き、心配です。予防や治療について教えてください。(90歳男性)

回答

 おいしい食事を取ることは生きてゆくうえで必要なばかりでなく、生きる楽しみの一つでもありますよね。

 食べ物を飲み込むことを嚥下(えんげ)といいます。食べ物を口から咽頭、食道を経て胃へ送り込む運動です。

嚥下

 一方、呼吸の際には空気が鼻、咽頭、喉頭、気管、肺を行き来します。すなわち、咽頭は食べ物の通り道であると同時に、呼吸の際の空気の通り道でもあります。普段は呼吸のために咽頭、喉頭、気管は交通している一方、食道の入り口は括約(かつやく)筋が収縮することで閉じています。

 嚥下時には、①鼻と咽頭の間が閉じる ②喉頭が上に上がる ③気管の入り口が閉じる ④咽頭が収縮する ⑤食道の入り口が開く―などの運動が1秒以下の短時間に起こります。これらの運動によって、食べ物を気管に入ることなく食道に送り込むことができます。
 逆に、これらの運動が一つでもうまく働かなかったり、タイミングがずれたりすると、食べ物が気管に入ることになり、むせ込みます。これを誤嚥(ごえん)といいます。

 高齢者は咽頭や喉頭の粘膜の感覚が鈍ったり、筋肉の動きが悪くなったりする結果、誤嚥しやすくなったり、食道に入りきらない食べ物が咽頭に残ったりします。
 また、脳血管障害や全身性の神経や筋の病気などでも運動がうまく行えなくなり、嚥下障害を起こします。
 ひどくなると、慢性的に食べ物や唾液が肺に入り、誤嚥性肺炎につながります。肺炎は日本人の死因の第3位で、そのほとんどは高齢者です。誤嚥性肺炎は高齢者の病気とも言えます。

  誤嚥を防ぐ簡単な方法には「食べ物を少しずつ飲み込む」「飲み込むことを意識する」「水やお茶などさらさらしたものには、市販のとろみ剤などで少しとろみをつける」などがあります。歯磨きやうがいをしっかり行い、口の中で雑菌が繁殖しないようにすることも大切です。
 誤嚥が強い場合には専門的なリハビリテーションなどの治療法もありますので、医療機関でご相談ください。


◎ 著者プロフィール
氏名:兵頭 政光(ヒョウドウ マサミツ)
所属:耳鼻咽喉科・頭頸部外科
役職:教授

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