活動報告

  • 2018.4.11
  • 活動報告

病院経営に係るカリキュラム改善のための意見交換及び施設見学として、アメリカ:ウエストバージニア大学メディカルセンターを訪問しました。(2018.4.7~4.11)

     

ウェストバージニア大学病院訪問(2018.4.8~4.9) 菅沼 成文

ウェストバージニア大学医学部の訪問はこれまで数度にわたる。というのは、20年来の付き合いがあり、国際労働機関の職業性呼吸器疾患対策のミッションで何度も様々な国で共に講師としてご一緒してきたJohnE.Parker教授が長年勤めている大学だからだ。これまでも2度ほどParkerの回診に同行させてもらい、集中治療室での治療を見学したり、呼吸器内科外来での診察の様子を見せてもらったりしてきたが、今回は特に病院の経営に携わっているトップマネジメントとの意見交換を準備してもらった。今回面会したのは、CMO(ChiefMedicalOfficer)のJudyCharlton教授、StephenHoffman教授から病院運営の全体像について,VicePresidentforMedicalAffairsのRonaldPellegrino教授から病院運営の具体的な指標について、また、Parker教授自身からも長年呼吸器内科の長として、外来、入院による医療業務によって病院の運営に携わってきた経験についても、今回も実際の回診、レジデント、フェローの指導の現場に立ち会いながら、カルテ記載の際にどのように診療報酬の請求がなされているかについても、併せて伺った。

ウェストバージニア大学は人口5万人のモーガンタウン市にある州立大学である。学生数は2万人、大学院生は5,000人で、研究大学である。1800年代に土地を寄付されて始まったLand-Grantの州立農業大学であった。現在ある医学部は、元々ゴルフ場であった土地に建てられており、丘陵地に建っている。医学部と附属病院は隣接していて、現在の医学部を含む医学関係の学部(米国では医学部、歯学部、公衆衛生学など大学院)HealthScienceCenterは旧附属病院の建物を活用している。ロックフェラー氏の寄付による脳科学の研究施設が付属施設として出来ている。

新しい病院は現在600床で独立した精神科病院が隣接している。将来的には、小児病院も独立させる予定である。駐車場が足りない課題を解決するためと外来患者のアクセスをよくするために、近隣に外来施設を数カ所作っている。本院であるJ.W.RubyMemorialHospitalには、凡そ外来手術と入院手術を併せて50の手術室があり、フル稼働している。集中治療室が80室ある。外来部門と入院部門に分けてパフォーマンスの評価を行っている。入院日数は5.5-6日を目標にしているが、増床によって待機患者の数が減ったものの重症患者が増えていて在院日数がやや増加している。外来の評価には、専門医への新患の待ち日数を指標の一つとしており、上記の専門外来を集めた近隣外来施設の設立でこの日数を減らしている。この外来施設の職員は本院の職員となっており、本院での業務と外来施設での業務を週交代で行うなどの対応をしている。

Rubyのみでの入院手術数は年間11,000件であるのに対して、外来手術数が16,000件である。内視鏡件数は入院が2,000件、外来が6,000件近くである。来院した患者数は2017年で95万人を越えた。病院の病床稼働率は概ね90%埋まっているが、今期は大幅な増床にもかかわらず96%を越える状態である。このニーズに応えるために更なる増床を計画している。

WVUHealthSystemは、近隣の8病院を含めた病院連携システムで、大学病院であるJ.W.RubyMemorialHospital以外に、3つはWVUが所有している。電子カルテEpicで全ての病院が繋がっており、同じ環境で医療を提供可能である。8つの病院は元々、公的病院であったものが多く2-300床の中核病院と小規模の市立病院などからなっている。特に、近距離に向かい合うMonGeneralHospitalのように共同購入のみで競合している病院もあったが、特に救急診療における協力体制の確立がきっかけで、共同歩調を取り始めている。大学病院において、教育と研究を常に行っていることが、医療の質の高さに直結しており、専門医研修のフェロー(呼吸器内科では3年間)、レジデント(内科では2年間)が豊富にいる環境であり、医療を担当する人員の多さからも、地域の病院との間に優位性を確立している。また、これらの病院の中には、経営的には厳しい病院もあるものの、連結決算としているために、赤字が出たとしても大学病院の黒字で解消することができる。必ずしも医学部から給与が出ていることを意味しないが、8つの全ての病院の医師は医学部の教員の立場を与えられている。

これらの8つの病院がRubyを中心のハブとして、地域のハブ病院に連結しつつ、地域を支える形で協力し合う体制を作っている。さらに、CommunityOutreachのプログラムが新設され、専門医が地域に出向いて診察し、入院や手術が必要であればRubyに連れてきて治療を行うことで、地域医療に貢献している。Rubyは地域のほかの中核病院と比べて教育、研究を常に行っていることが質の高さに直結しており、医師数やその専門性から見て圧倒的な優位にある。MorgantownはPittsburghから車で1時間半ぐらいの距離にあるが、(36の病院からなる)UniversityofPittsburghMedicalCenterと規模こそ違うものの、構造としては似た取組がなされているのは興味深い。https://en.wikipedia.org/wiki/WVU_Medicine

病院の収益からの医学部への支援については、医学部との間で取り決めがなされて、年間30億円ほどを医学部に入れている。これは医学部の基礎と臨床を含めた医学教育、研究を支援するためのものである。WVU全体に対する支援義務はない。強いて言えば、大学全体でみた場合に、研究費など外部資金の獲得は医学部の教員が最も多いため、その間接経費が本部に入ることによって十分に貢献できている。米国の大学では附属病院収入による本部への貢献がオハイオ州立大学のように収入の7%などと決まっているところもある。

病院長などのトップマネジャーの採用にあたっては、サーチコミッティと言われる選考委員会が大きな役割を果たす。全米から同様な職種で成果を出した人材を採用することが多い。任期があって雇われている訳ではないので、成果がでなければ任を解かれることになる。そうした環境でJudyCharlton教授は12年間CMOの職にあり、同僚の教授たちから見ても、その有能さを発揮しつづけている。

人事関係については、ここ二年間ぐらいで新しい臨床医学教員を200人以上採用しているが、これは新しい部門を作るためなど、採用される新教員の成長にも繋がることで、必ずしも高い給与を示して採用している訳ではない。民間病院の給与と比較すると大凡3分の2から4分の3ぐらいの額と思われるとのこと。また、離職勧告についても必要に応じて行われ、WVUに合わない教員にはその人の良い部分について推薦できる人については他施設へ推薦し、問題がある場合は罷免するなどの対応がされている。病院の機能を高く維持できている。

医学部の臨床医学の教員の給与は、医学部と病院とから併せて支払われるため、医学部の給与負担も少なくて済む。テニュア制度については、臨床医学の教員でテニュアを持っている人は殆どいない。Parker教授も20年以上のWVUでの教授職を務めながらテニュアは持っていない。しかし、WVUは公式な定年はなく、現在68歳である彼は、昨年から90%エフォートへと職務内容を減らし、来年は70%まで減らす予定にしている。20年前にWVUの教授に就任した際の給与は117,000ドルであり、一般病院よりかなり少なかったが、現在は180,000ドル程度と一般病院に近づいている。科長を務めていた際には300,000ドルぐらいであったという。実際、ICUのベッド一つで年間100万ドルの収入になることから彼の科が担当するICUのみで年間2500万ドルの売上げがあることになる。実際には米国では患者一人当たりの費用を請求している訳ではなく、例えばICUにいる患者を毎日上級医が回診などを通して治療に手を下すことによって掛かる時間が想定として決められており、通常の処置であれば一度35分の医師費用の請求、より重度の処置であれば77分の費用請求というように請求がなされる。処置については、レジデントやフェローでは請求ができないので、上級医がいなければならない。上級医がいないところでなされた処置について、いたかのようにカルテ記載をすると不正請求ということになる。一方で病院のコストに対しても請求がなされることになる。従って、患者の側からすると二枚の請求書が医師と病院から来ることになる。請求された額については、どちらも病院に入って、一部給与にも使われる。テニュア制度自体がサバティカルを取ることを目標にしたものであって、臨床医学の教員でサバティカルを取る者が殆どいないことにもよる。

ウェストバージニア大学全体の財務報告https://iara.wvu.edu/files/d/ed90e645-6777-48e3-9edb-7efb0f025205/10-19-17-wvu-financial-statements-cla.pdf