高知大学医学部 看護学科 臨床看護学講座 溝渕研究室

高知大学医学部 看護学科 臨床看護学講座 溝渕研究室

馬路精製ユズ種子油(以下、精製ユズ種子オイル)を塗布して得られる効果

 対象者は、「アトピー性皮膚炎」と「乾燥肌・乾皮症」の患者さんです。

1. アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎は、痒みを伴う湿疹性変化を主な病変とし、軽快・増悪を繰り返す皮膚のアレルギー性炎症疾患です。現段階で、アトピー性皮膚炎を完治させる治療方法はありません。治療の基本は、痒みのコントロールが中心となっています。皮膚炎を抑えるための局所療法としては、抗ヒスタミン軟膏、ステロイド軟膏、免疫抑制効果を有するタクロリムス軟膏の塗布が行われていますが、どの薬剤にも副作用があるため、長期間の使用は難しいのが現状です。

 精製ユズ種子オイルには、細胞実験の結果、アレルギーに関与する肥満細胞から、かゆみの原因となるヒスタミンの放出を抑える効果があることがわかりました。我々が、ユズの研究を始めるきっかけとなった実験です。また、試験管内での実験で炎症の原因となる活性酸素を消去する効果があることを見出しました。オイルが皮膚バリアを改善し、皮膚からの水分の蒸散を防ぐ効果も期待できます。
 そこで、ヒスタミンがかゆみの原因であるアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、「ヒト介入試験」を行いました。
 皮膚病変やかゆみの症状が強い部位に1日2回(朝、夕)、28日間、適量を塗布して頂きました。

 その結果、精製ユズ種子オイルの塗布には副作用は認められず、安全に長期使用できることが確認できました。また、痒みを伴う乾燥肌や軽度な皮疹などの症状があるアトピー性皮膚炎の患者さんには、かゆみや皮膚炎症状を抑えるなど改善が認められました。

(山脇、東谷、溝渕ら:アレルギーの臨床36巻12号1190-1193頁、2016年)

2. 乾燥肌・乾皮症

 乾皮症は、加齢に伴って皮脂や汗の分泌が減少し、皮膚の最も表層である角層の水分保持機能が低下することにより皮膚が乾燥した状態です。最近では、石けんの使いすぎなどで、20歳代の若者にもみられます。
 すねの前面や脇腹から腰にかけて皮膚が白い粉をふいたようになり、進行すると魚の鱗のようになります(写真 1.左)。また、かゆみにとても敏感になり、掻くことを繰り返し傷になります(写真 2.左)

(写真1)

 乾皮症には決定的な治療方法が存在しません。保湿剤や炎症がある場合はステロイド剤が外用薬として処方され、かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン剤か抗アレルギー剤の内服薬が用いられることもあります。このように対症療法のみで対処しているのが現状です。精製ユズ種子オイルを用いた新しい乾皮症の治療方法を目指して、「ヒト介入試験」を実施しました。
 試験では、精製ユズ種子オイルをかゆみや皮膚症状が強い部位に、1日2回(朝、夕)、28日間、適量塗布しました。
 その結果、皮膚の保水量を保水計で計測すると、塗布前後で有意に皮膚保水量の改善が認められました。また、皮膚の症状は改善し(写真 1.右)、かき傷も消失したことから、かゆみも改善したことがうかがえます(写真 2.右)。


掻破痕の消失

(写真2 *論文投稿準備中)

※サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。