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コラム -医療情報提供-

前立腺肥大症の診断と治療

 前立腺とは膀胱のすぐ下にあるクルミ程度の大きさの男性特有の臓器です。精液の一部を作るなど、生殖に関わる機能を持っています。前立腺が肥大すると尿道が圧迫され“尿が出にくくなる”“排尿後に尿が残っている感じ”“頻尿”といった症状が現れます。
 前立腺肥大症の原因ははっきりしたものはわかっていませんが、加齢と性ホルモンが何らかの影響を及ぼしていると考えられています。55歳以上の男性の5人に1人、すなわち約400万人が前立腺肥大症に罹患していると推測している報告もあります。
 受診された際には、国際前立腺症状スコア(I-PSS)という質問票を使って、症状とその程度を点数化し、前立腺や膀胱、尿道の状態を調べるために超音波検査等を行います。
前立腺の肥大がそれほど大きくなく自覚症状もない場合は、経過観察をします。薬物治療では、肥大した前立腺を小さくする作用はないものの、前立腺や尿道を弛緩させ、尿を出しやすくさせるといった速効性があることから、α1遮断薬が第一選択薬として使用されます。副作用としては、稀にたちくらみやふらつきの症状が現れることもあります。最近では「ホスホジエステラーゼ-5(PDE5)阻害薬」というお薬も第一選択薬として使用されます。もともとは勃起不全に対するお薬ですが、その一種を少量含む薬が2014年から前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療に使われるようになりました。副作用でα1遮断薬が使えない方にも使用できますが、狭心症などの治療で硝酸薬を使っている人は併用できません。ほかにも、男性ホルモンの作用を抑えることにより、前立腺を小さくするお薬として、5α還元酵素阻害薬も用いられます。ただし、使用開始後効果が現れるまでに数か月かかり、服用を中止すると再び肥大してしまいます。
 残尿が多い場合や尿閉となる場合は経尿道的前立腺切除術(TUR-P)という手術を行います。ループ状の電気メスを装着した内視鏡を尿道内に挿入し、肥大した前立腺組織を切り取る手術です。最近では、レーザーを用いた内視鏡手術も行われています。
 前立腺肥大症が進行して前立腺がんになるわけではありませんが、前立腺肥大症と前立腺がんを同時に発症することはあります。その場合は、「前立腺特異抗原(PSA)」という血液検査をしたり、局在診断や生検のガイドとして有用なMRI検査で確認をします。
 最近、おしっこが出にくくなった、残尿感がある、おしっこの回数が増えたといった症状があれば、泌尿器科専門医にご相談ください。


◎ 著者プロフィール
氏名:久野 貴平(クノ タカヒラ)
所属:高知大学医学部附属病院 泌尿器科
役職:教授

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